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現状把握

アレンはマスタールームから、ダンジョンの現状を確認することにした。


「まずは現状を知らないとな」


 いきなりダンジョンを改造しても、何が問題なのか分からない。


 アレンはコアに現在のダンジョンについて説明してもらうことにした。


「このダンジョンの立地は?」


「近くに町があります」


「それなら悪くないな」


 冒険者が活動する町の近くなら、ダンジョンへ来てもらうこと自体は難しくない。


「ダンジョンは何階層ある?」


「十階層です」


「十階層か」


 アレンは頭の中でダンジョンを思い浮かべる。


「低階層からだんだん敵が強くなっていって、十階層には一ランク強いボスがいる感じか?」


「はい。その通りです」


「……普通だな」


 あまりにも普通だった。


 初心者が一階層から挑戦し、少しずつ強くなっていく。


 そして最深部でボスを倒す。


 ダンジョン攻略としては、非常に分かりやすい構成だ。


「なんてチュートリアルなダンジョンなんだ」


「チュートリアル……ですか?」


「いや、悪い意味じゃない」


 アレンはそう言いながらも、少し考え込んだ。


 初心者が挑戦する場所としては悪くない。


 だが、それだけだ。


「ドロップアイテムは?」


「魔石だけです」


「魔石だけ?」


「はい」


「もっといいものをドロップさせることはできないのか?」


「可能です」


「だったら、ポーションとか武器とか、もっと冒険者が欲しがる物を出せばいいじゃないか」


「それではダンジョンが赤字になってしまいます」


「赤字?」


「はい。現在の冒険者数では、魔石以外の価値がある物をドロップさせる余裕がありません」


「なるほど……」


 アレンは考え込んだ。


 つまり、今のダンジョンは利益を出すために最低限の報酬しか出せないらしい。


「じゃあ、ボスを倒したときは?」


「宝箱が出現します」


「中身は?」


「ポーション、短剣、鉄のインゴット、マナポーションなどです」


「……当たりは?」


「ありません」


 アレンは黙り込んだ。


 ポーションも短剣も役に立つ。


 鉄のインゴットも使い道はある。


 マナポーションも魔法使いには必要だろう。


 だが、どれも「絶対に欲しい」と思わせるような物ではない。


「俺が冒険者だったら、一度来たら二度と来ないと思う」


「なぜでしょうか?」


「何も期待できないからだ」


 アレンは淡々と答えた。


「敵を倒しても魔石だけ。ボスを倒しても、普通に買えるような物しか出ない」


「……」


「だったら、一度攻略したら終わりだろ」


 アレンは椅子に座った。


「でも、いい物を出すには冒険者を増やさないといけない」


「はい」


「冒険者を増やすには、いい物を出した方がいい」


「はい」


「……」


 アレンは腕を組んだ。


「完全に卵が先か、鶏が先かだな」


「その通りです」


「それなら、ドロップ以外で人を呼ぶ方法を考える必要がある」


「はい」


「人が増えれば、もっと良いドロップを出せるようになるんだな?」


「はい。冒険者が増えるほど、ダンジョンの収益も増えます」


「そして滞在時間が長くなれば、さらに収益が増える」


「その通りです」


 アレンは少しだけ笑った。


「なるほど」


 最初はただのダンジョン経営ゲームだと思っていた。


 だが、どうやら簡単にはいかないらしい。


「人を増やすか、滞在時間を伸ばすか……」


 アレンは改めてダンジョンの情報を眺める。


「まずは、冒険者が何度も来たくなる理由を作らないとな」


 不人気ダンジョンを人気ダンジョンに変える。


 アレンのダンジョン経営が、ここから始まった。

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