当選発表
今日は、宝くじ箱の発表日だった。
今回の宝くじでは、景品を事前に提示していなかった。
応募数によって景品を変えるつもりだったからだ。
アレンは発表を前に、応募総数を確認した。
「2843口か……」
予想以上の応募数だった。
これだけ集まったのなら、景品をしょぼくするわけにはいかない。
「外れた人にも、次は自分が当たるかもしれないって思わせないとな」
宝くじは、当選者だけを喜ばせればいいわけではない。
外れた人間が、次回も参加したいと思ってくれることが重要なのだ。
アレンは気合いを入れて景品を決めた。
そして、発表が始まった。
「まずは四等」
下一桁――三。
当選した冒険者が番号札を宝くじ箱に入れる。
すると、ポンッと音がしてブランデーが出てきた。
「酒か!」
「四等でブランデーなら悪くないな」
冒険者たちから声が上がる。
続いて三等。
「下二桁――六十」
当選した冒険者が番号札を入れる。
今度は化粧品一式が出てきた。
「化粧品だ!」
「こんなに入ってるのか?」
「三等でこれかよ」
四等よりも明らかに豪華な景品に、会場の期待が高まっていく。
そして二等。
「下三桁――六六六」
該当する番号札は二口あった。
そして、その二口とも――隣領の騎士団だった。
「我々だ!」
騎士団から声が上がる。
隊長が二つの番号札を確認し、順番に宝くじ箱へ入れていく。
一つ目。
ポンッ。
二つ目。
ポンッ。
二つの箱が排出された。
騎士たちがそれぞれ箱を受け取る。
「何が入っている?」
箱を開ける。
「……これは」
中に入っていたのは、真珠のネックレスだった。
二つとも同じ景品だ。
しかし、その真珠を見た瞬間、周囲の冒険者たちが騒ぎ始めた。
真珠は大きく、形も驚くほど整っている。
「こんな真珠、見たことないぞ」
「俺もだ」
「こんなに大きくて、形が揃っているのか?」
宝石を見る目を持つ冒険者が、真珠をじっくり確認する。
「……これは凄い」
「分かるのか?」
「ああ。こんな真珠は見たことがない」
「どれくらいだ?」
「上位貴族にすら売れるレベルだぞ」
その言葉に、会場が一気にざわめいた。
「二等でこれかよ!」
「しかも二口とも騎士団か!」
「じゃあ一等は何なんだ?」
一気に視線が一等へ集まる。
そして――。
「一等」
会場が静かになった。
「下四桁――一八九九」
該当する番号札を持っていたのは、またしても隣領の騎士団だった。
隊長が番号札を確認する。
「……よし!」
二等二口に続いて、一等まで騎士団。
隊長は意気揚々と番号札を宝くじ箱へ入れた。
コロン。
宝くじ箱から出てきたのは、一つの箱だった。
「これは……?」
箱を開ける。
中に入っていたのは、腕時計だった。
「時計?」
「腕につけるのか?」
騎士たちが腕時計を取り囲む。
文字盤に針。
手首につけられるほど小さい。
しかも、この世界には存在しない精密な構造をしている。
「こんな小さな時計があるのか?」
「どうやって作ったんだ?」
周囲の冒険者たちも集まってくる。
「これ、一体どういう仕組みなんだ?」
「こんな時計、見たことないぞ」
完全なオーバーテクノロジーだった。
一等の景品を見たことで、会場はさらに騒然となる。
「二等の真珠も凄かったけど、一等はもっと凄いぞ!」
「俺も次は当てたい!」
「今回は一口だけだったからな!」
「次はもっと応募するぞ!」
実際、今回一口だけ応募していた冒険者も多かった。
宝くじ箱がどんなものなのか分からない。
景品が何なのかも分からない。
だから、とりあえず一口だけ。
そんな様子見の冒険者が多かったのだ。
そのため、外れたことへの不満はそれほど出なかった。
むしろ、目の前でこれほどの景品が出たことで、次回への期待が一気に高まっていた。
「一口でも当たる可能性があるんだ」
「次は俺かもしれないぞ!」
「次こそ当ててやる!」
そんな声があちこちから上がる。
一方、隣領の騎士団では――。
「隊長!」
文官が嬉しそうに声をかける。
「一等に加えて、二等も二口とも我々です!」
「分かっている」
隊長は真珠のネックレス二つと腕時計を眺める。
ダイヤモンドを持ち帰ったことで褒められた。
今回もこれだけの品を持ち帰れば、また褒美が期待できる。
「これは大きいぞ」
隊長は満足そうに笑った。
文官も頷く。
「はい。今回も素晴らしい成果です」
二人は上機嫌だった。
しかし、アレンは隣領の騎士団が何口応募したのかなど知らない。
アレンが知っているのは、応募総数が2843口だったということだけだ。
それでも、発表を終えた冒険者たちの反応を見れば十分だった。
「次は俺が当てるぞ!」
「次はもっと応募する!」
そんな声が聞こえてくる。
アレンは満足そうに頷いた。
景品を事前に提示しなくても、当選した景品が凄ければいい。
外れた人間にも、
次は自分が当たるかもしれない。
そう思わせることができれば、次の宝くじにも繋がる。
「宝くじ箱、結構使えるな」
アレンはそう呟き、早くも次の景品を考え始めていた。




