↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
28/336

宝くじ箱

アレンが要望箱から排出したワンタッチテントは、冒険者たちの度肝を抜いた。


「なんだこれ!」


「布だったよな?」


「広げただけでテントになったぞ!」


「しかも、こんなに簡単に設置できるのか!」


 テントの周囲には、たちまち冒険者たちが集まっていた。


 何人かは何度も触ったり、畳んだり、もう一度広げたりしている。


「これなら野営が楽になるぞ」


「雨の日でも使えそうだな」


「ダンジョンの中で寝泊まりするなら、かなり便利だ」


 アレンはマスタールームから、その様子を眺めていた。


「ふむ。反応はかなりいいな」


 冒険者たちが欲しがる物を知る。


 その目的で設置した要望箱だったが、十分な成果は得られた。


 要望を見れば、何が欲しいのかはだいたい分かる。


 そして今回のワンタッチテントで、便利な野営用品にも需要があることが分かった。


「でも、これはガチャには入れない」


 アレンはすぐに判断した。


 ワンタッチテントは便利だ。


 実際、冒険者たちの反応もいい。


 だが、一人が何個も欲しがるような物ではない。


「テントなんて大量には必要ないからな」


 一個あれば十分。


 壊れたとしても、予備を一個持っていればいい。


 つまり、テントをガチャから出しても、一度当たれば終わりだ。


「これじゃ、集客効果が低い」


 アレンが欲しいのは、一度来て終わる冒険者ではない。


 何度も来てもらえる仕組みだ。


「要望箱は、もういいか」


 アレンはそう判断した。


 これまでに集まった要望を見ることで、冒険者たちが何を欲しがっているのかは、ある程度分かった。


 ならば、次の仕組みに変えよう。


 アレンは要望箱を撤去した。


 その場所に、新しい箱を設置する。


「名前は……宝くじ箱でいいか」


 箱の前には説明書きがある。


 魔石十個を入れる。


 すると番号札が一枚出てくる。


 何口でも応募可能。


 当選番号が発表されれば、当たった番号の持ち主が景品を受け取れる。


「これなら何度でも応募してくれる」


 アレンは満足そうに頷いた。


 一人一回ではない。


 二口でも十口でも、もっと多くてもいい。


 魔石を持ってくる理由ができる。


「問題は景品だな」


 そこは後で考えればいい。


 そう思っていた。


 しかし、隣領ではすでに宝くじ箱に目をつけている者がいた。


「隊長」


 文官が真剣な顔で話しかける。


「どうした?」


「今回の宝くじですが、我々で応募の五十パーセントを占めるのはどうでしょう」


「五十パーセント?」


 隊長が聞き返す。


「はい」


 文官は宝くじ箱の説明を思い出しながら話す。


「何口でも応募できるのであれば、こちらが大量に魔石を投入してしまえばいいのです」


「なるほど」


「応募の半分を我々で占めれば、それだけ当選する可能性も高くなります」


 隊長は腕を組む。


「しかし、そこまでして何が出るか分からんぞ」


「それでもです」


 文官は力強く言った。


「ダイヤモンドの件をお忘れですか?」


 隊長の表情が変わった。


「あれは……確かに凄かった」


 隣領へ持ち帰ったダイヤモンド。


 領主が実物を見て、国へ献上するほどの品だった。


「ダイヤモンドを持ち帰ったことで、領主様からも高く評価されました」


 文官はさらに続ける。


「今回も素晴らしい景品を手に入れて持ち帰れば、ボーナスが期待できます」


「……ボーナス」


 隊長の目が輝いた。


「なるほど。ならば応募する価値はあるな」


「でしょう?」


「よし。五十パーセントだ」


「では、必要な魔石を集めましょう」


 隣領の騎士たちは、宝くじのために本気で魔石を集め始めた。


 その頃。


 マスタールームでは、ダンジョンコアが異変に気づいていた。


「アレン!」


「どうした?」


「すごい勢いでダンジョンポイントが増えてるよ!」


「え?」


 アレンは思わず画面を見る。


 確かに、ダンジョンポイントが今までとは比較にならない勢いで増えている。


「何で?」


「分からないよ!」


 アレンは原因を探る。


 そして、宝くじ箱に目を向けた。


「……これか?」


 魔石十個。


 それを冒険者が箱へ入れる。


 すると番号札が出てくる。


「魔石を入れた時点では、景品を出してない」


 アレンは気づいた。


「つまり……」


 魔石はダンジョンに入ってくる。


 しかし、景品を排出するのは当選した時だけ。


「景品を出してないから、支出が少ないんだ」


 魔石を受け取る。


 ポイントが増える。


 しかし、今のところ景品をほとんど出していない。


 アレンはしばらく画面を眺めた。


「これ、かなり儲かるな」


 宝くじ箱を作っただけで、想像以上の勢いでポイントが増えている。


 ならば――。


「景品をもっと良くしないとな」


 アレンの考えが変わった。


 今までは、景品を出すことによる支出を気にしていた。


 だが、これだけポイントが増えるなら話は別だ。


「冒険者が欲しくなる景品を用意して、もっと応募してもらえばいい」


 応募が増えれば魔石が増える。


 魔石が増えればダンジョンポイントも増える。


 ならば、景品を豪華にしてもいい。


 アレンは拳を握った。


「よし!」


 アレンの目が輝く。


「景品に力を入れるぞ!」


 要望箱で冒険者の欲しい物を調べる段階は終わった。


 これからは、アレンが景品を考える番だ。


 そしてその景品次第で、宝くじ箱に投入される魔石の量は大きく変わることになる。


 アレンは早速、どんな景品なら冒険者が何度でも応募したくなるのかを考え始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。