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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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変わり始めた世界

パーティーも一段落し、クラリスはセレスティアと並んで窓際に立っていた。


 会場ではまだ多くの人が談笑している。


 クラリスの帰省を祝うためのパーティーだったはずだが、セレスティアの周囲には最後まで人が集まっていた。


「お姉様、本当にこちらでも人気がありますね」


「ありがたいことですわ」


 セレスティアはそう言って、会場を見渡した。


「ところでクラリス。あなたの国と王国は友好国ですわね?」


「はい。昔から交流があります」


「もし、この国が他国から攻められたら?」


「王国から援軍を出します」


 クラリスは当然のことのように答えた。


 セレスティアも頷く。


「その通りですわ。ただ、今までなら問題は距離でした」


「距離?」


「ええ」


 セレスティアはテーブルの上に置かれていた紙を取り、簡単な地図を書き始めた。


「クラリスの領地から、一番近いフローラの領地まで約五百キロ」


「五百キロ……」


「王都までは約八百キロ。私の領地からでも約八百キロ。リリアの領地からなら約千二百キロですわ」


 クラリスは地図を見つめた。


 これまでなら、それだけ離れていることは当たり前だった。


 軍隊を動かす。


 兵士を集める。


 食料を運ぶ。


 武器を運ぶ。


 そして何百キロもの距離を進む。


 援軍を出すとしても、簡単な話ではない。


「だから、いざというときには、まず一番近いフローラの領地から第一陣を出す」


「はい」


「その第一陣が先行して、王都から本隊を出す準備をする。王国軍の本陣は王都に集結させる」


 セレスティアは地図の上を指でなぞった。


「今までなら、それが現実的な方法でしたわ」


「今までなら……」


 クラリスが呟く。


「ですが、ダンジョンを使えば話が変わります」


 セレスティアの指が、リリアの領地を示した。


「リリアの領地からダンジョンを使えば、クラリスの領地まで約二百キロですわ」


「……二百キロ」


「千二百キロではありません」


 クラリスは地図を見直した。


 数字だけでも、その差は大きい。


「つまり、リリアの領地から援軍を送れる?」


「ええ。しかも、通常の行軍とは比較にならない速度で」


「……」


 クラリスはしばらく黙った。


 そして、ふと気づく。


「リリアの領地って……帝国を警戒するためだけの場所じゃなくなったんですね」


「そういうことですわ」


 セレスティアは頷いた。


「これまでは帝国との国境を守る意味が大きかった。ですが、ダンジョンによる移動が可能になったことで、王国の西側にあるリリアの領地が、別の意味でも重要になりました」


「クラリスの国への援軍拠点……」


「それだけではありませんわ」


 セレスティアは地図を見る。


「どこか一つの領地を拠点にすることで、王国全体の動かし方まで変わってきます」


 クラリスは何も言わず、地図を見つめていた。


 王国と自分の国との距離は、数字の上では変わっていない。


 フローラの領地から五百キロ。


 王都から八百キロ。


 リリアの領地から千二百キロ。


 それは以前と同じだ。


 だが、ダンジョンという新しい交通手段が生まれたことで、その数字が持つ意味は変わってしまった。


「……王国って、本当に変わったんですね」


「ええ」


 セレスティアは静かに答えた。


「そして、変わっているのは王国だけではありませんわ」


「え?」


「王国が変われば、周囲の国との関係も変わります」


 クラリスはセレスティアを見る。


「私の国には、まだ大きな変化はありません」


「そうですわね」


「でも、王国との距離は変わった」


「その通りですわ」


 クラリスは、少しだけ考えてから言った。


「今までなら、王国から援軍が来るとしても、何日も何十日もかけて移動しないといけなかった」


「ええ」


「でも、これからは違う」


「ええ」


「……王国が、近くなったんですね」


 セレスティアは微笑んだ。


「そういうことですわ」


 クラリスは窓の外を見る。


 故郷の街並みは、帰ってくる前と何も変わっていない。


 人々の暮らしも、街の姿も変わっていない。


 けれど、その外側では確実に何かが変わり始めている。


 そして、その中心にあるのが王国だった。


「世界は……王国を中心に、大きく変わり始めているんですね」


 クラリスの言葉に、セレスティアはすぐには答えなかった。


 ただ、静かに地図へ視線を落とした。


 その地図の上では、これまで遠く離れていた国々が、少しずつ一本の線で繋がり始めていた。

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