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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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クラリスの国へ

「セレスティア、クラリスの領地に行って来ないか?」


マスタールームでいつものように過ごしていたセレスティアに、アレンが突然声をかけた。


「どうして?」


セレスティアが不思議そうに聞き返す。


「クラリス一度も帰ってないし、リリアの領地からクラリスの領地までダンジョンを移動したらすぐだぞ」


クラリスは隣国の王女だ。


王国に留学してからというもの、勉強やセレスティアとの交流に忙しく、まだ一度も自国へ戻っていない。


普通なら、隣国とはいえ簡単に往復できる距離ではない。


しかし、今は事情が違う。


アレンのダンジョンには、すでにクラリスの国にあるダンジョンへ繋がるルートが存在している。


「そうね、クラリスと一度ダンジョン間の移動を経験した方がいいわね」


セレスティアもすぐに意味を理解した。


ダンジョン同士を繋ぐという、これまで誰も考えなかった移動手段。


それを実際に体験すれば、クラリス自身も自国に戻るときに利用できる。


そして何より、セレスティア自身も一度経験しておく価値がある。


先触れを出し、セレスティアはクラリスの国に一緒に移動することにした。


向かったのは、アレンのダンジョンに設けられた検問所だった。


国境を越えるための施設として、すでに必要な設備は整えられている。


一般にはまだ開放されていない。


そのため、検問所の前には通常の冒険者や商人の姿はない。


セレスティアとクラリスはそのまま検問所を抜けていく。


「セレスティア様、この検問所を抜けたら私の国ですか?」


クラリスが周囲を見回しながら尋ねる。


自分の国へ向かっているはずなのに、見慣れた国境とはまったく違う。


そこにあるのは、ダンジョンの中に作られた検問所だ。


「まだ一般開放してないけどね」


セレスティアが答える。


クラリスはその言葉を聞きながら、さらに先へ進む。


ダンジョンの内部を進んでいく。


しばらくすると、前方に出口が見えてきた。


「トンネルで繋がっているのですね」


クラリスが理解したように言う。


「別の場所に移動したって演出よ」


セレスティアはあえて細かい仕組みを説明しない。


重要なのは、ここを通ることで別の国へ移動できるということだ。


やがて二人は反対側へ出る。


すると、そこにも検問所があった。


クラリスは足を止める。


「こちら側にも検問所があるのですね」


「国境跨ぐから必要よ」


今度はクラリスの国側に設けられた検問所だ。


ダンジョンの中にあるとはいえ、ここから先はクラリスの国。


国境を越える以上、何らかの管理が必要になる。


クラリスは改めて周囲を見回した。


「こちらは普通のダンジョンなんですね」


そこに広がっているのは、特別な景色ではない。


冒険者が利用する、普通のダンジョンだった。


「ここからあなたのお城まで3時間よ」


「……」


クラリスは一瞬、黙った。


三時間。


その数字だけなら、それほど異常には聞こえない。


だが、クラリスは自国の距離を知っている。


自分が持っている車を使ったとしても、元のダンジョンから城までは33時間かかる。


そして、それですら普通の移動に比べれば圧倒的に速い。


「普通だと三週間かかります」


クラリスがそう言うと、セレスティアも改めてその差を実感した。


三週間。


馬車で移動すれば、それだけの時間が必要になる。


それが、ダンジョンを利用することで、まず国境を越えるまでの長大な移動を省略できる。


さらにクラリスの車を使えば3時間。


そして、この先の移動を整備すれば、それすら短くできる。


今回の移動だけでも、ダンジョンが単なる冒険者のための施設ではないことが分かる。


商人なら、これまで何週間もかけて運んでいた商品を短時間で運べる。


人も同じだ。


遠く離れた国へ行くことが、今までのような大旅行ではなくなる。


外交官が移動する時間も変わる。


国と国との距離そのものが、物理的には変わらなくても、感覚としてはまったく違うものになる。


セレスティアは、目の前の検問所を眺めた。


まだ一般には開放されていない。


今は限られた者だけが利用する場所だ。


だが、これが広がっていけばどうなるのか。


一つのダンジョンと別のダンジョンを繋ぐ。


それをさらに別の場所へ繋ぐ。


そうやって網のように広がっていけば、国境を越えることさえ、今よりずっと身近になる。


「ダンジョンをうまく利用したら世界が変わるわ」


セレスティアの言葉に、クラリスも検問所の先を見つめる。


これまでダンジョンとは、魔物を倒し、素材を集め、冒険者が利益を得る場所だと思っていた。


しかし今、自分がそのダンジョンを通って国境を越えた。


それだけで、三週間かかるはずだった移動が大きく短縮された。


「本当ですね」


クラリスは素直に頷いた。


まだ一般開放すらされていない。


それでも、すでに世界を変える可能性が目の前にある。


セレスティアもクラリスも、その意味を実感しながら、クラリスの城へ向かうため車へ乗り込んだ。

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