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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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ステラとデート

ステラはアレンとデートさせられていた。


正確には、デートをさせられているように見えるだけで、本人にそのつもりはまったくない。


手には一冊の台本。


「……私は帝国の皇女よ」


ステラは台本を握りしめながら呟いた。


帝国皇女である自分が、なぜ王国の男と二人で町を歩いているのか。


しかも、その予定を決めたのはセレスティアだ。


「でも……セレスティアには逆らえなかった」


思い出すだけで背筋が伸びる。


「何よ……お母様より怖いわ」


皇女として帝国では誰もが自分に気を遣う。


しかし、セレスティアは違った。


皇女だからといって特別扱いすることもなく、必要なら容赦なく指摘してくる。


ステラは台本を開いた。


最初の項目を確認する。


『移動中は手を繋ぐ』


「……」


ステラの手が震えた。


「私は帝国の皇女よ」


もう一度、自分に言い聞かせる。


そして、隣を歩くアレンを見る。


何の緊張感もない。


「……切れそう」


何がとは言わない。


「落ち着け、私」


ステラは深呼吸した。


そして台本通りに手を繋いだ。


「まずはボーリングだな」


アレンに案内され、ステラは見慣れない施設へ入った。


「これは?」


「ボーリング」


「初めて見た遊びだわ」


大きな球を転がし、遠くに並んだピンを倒す。


ただそれだけの遊び。


ステラは何度か挑戦しながら考えた。


王国ではこんな遊戯が流行っているのか。


娯楽施設がここまで整備されている。


それだけでも帝国とは違う。


だが、この時点ではまだ、その程度の感想だった。


次に案内されたのは映画館だった。


暗い室内。


大きな画面。


そして、そこに映し出される映像。


「……」


ステラは言葉を失った。


「なんだ……これは……」


物語が始まる。


人が動く。


風景が動く。


まるで目の前で本当に起きているかのような映像が、巨大な画面に映し出されていく。


「衝撃だわ……」


これは娯楽という言葉だけでは片付けられない。


「文明レベルが違いすぎる」


ステラは映画から目を離せなかった。


「帝国は……王国に文明レベルで、こんなに離されているの?」


自分は帝国のことを知っているつもりだった。


王国についても、留学生として調査するつもりだった。


だが、自分が知っていた王国は、あくまで帝国から見た王国だった。


実際に足を踏み入れてみれば、知らないものばかりだ。


そして、それは映画館だけでは終わらなかった。


ジェットコースター。


観覧車。


次々と初めて見るものに乗せられていく。


観覧車がゆっくりと上昇していく。


ステラは最初こそ景色を楽しんでいた。


だが、最高地点に近づいたところで、その表情が変わった。


「……遠くまで見えるわね」


町が一望できる。


さらにその向こうまで視界が届く。


ステラは遠方を見つめた。


「……戦場が丸見えではないか」


地形がよく分かる。


軍が動けば、かなり遠くからでも確認できる。


「これは軍事施設としても使えるのでは……?」


観覧車を降りた後も、ステラの頭からその考えは離れなかった。


そして最後に案内されたのがお化け屋敷だった。


「これも娯楽なの?」


中に入る。


暗闇の中から何かが現れる。


ステラは驚きながらも、周囲を観察していた。


そして、そこで一体のレイスを見つける。


「……本物?」


「たぶん」


「たぶん!?」


ステラはアレンを見る。


「本物のレイスがお化けではないか」


「お化け屋敷だからな」


「王国はアンデッドまで使役しているの!?」


ステラの中で、王国の評価がさらにおかしな方向へ進んでいく。


娯楽施設にアンデッド。


普通ではない。


絶対に普通ではない。


その後も台本に従って施設を回り、最後には休憩することになった。


そして、なぜか台本には妙な指示まで書かれていた。


ステラはそれを見て頭を抱えた。


「……セレスティア」


なぜこんなものまで台本に書いたのか。


アレンは相変わらず平然としている。


ステラは改めて目の前の男を見た。


「この男は何者なのよ」


帝国皇女を相手にしているというのに、まるで態度が変わらない。


しかも、目の前で何が起きても大して動じない。


「そして、なんで動じないのよ……」


自分だけが振り回されている。


そんな気がしてならなかった。


しばらくすると、アレンが立ち上がった。


「俺の案内もここまでだな」


「え?」


「後は自由に見て回るといい」


それだけ言うと、アレンはあっさりと帰っていった。


ステラはその背中を見送った。


そして、今日一日を思い返す。


ボーリング。


映画館。


ジェットコースター。


観覧車。


お化け屋敷。


どれも帝国にはない。


それどころか、帝国で想像すらしていなかったものまであった。


「……王国は」


ステラは小さく呟く。


「絶対に敵にしてはいけませんわ」


留学生として来たはずだった。


王国の情報を持ち帰るつもりだった。


だが一日で分かった。


自分がまだ、王国のことを何も知らない。


そして何より――。


この国の中枢にいるセレスティアという女性が、さらに恐ろしく思えてきた。

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