同じ布一枚
アレンは初めて、セレスティアの台本に感謝していた。
今回の台本は、ダンジョンランドのプール貸し切りデートだった。
今までセレスティアの台本には、何度も疑問を抱かされてきた。
だが、今回は違う。
プールで遊ぶ。
それだけで、アレンの気分は上がっていた。
そして、プールに到着すると、セレスティアが選んだ水着を身につけた三人とクラリスが姿を現した。
セレスティアもフローラもリリアも、堂々としている。
しかし、クラリスだけは恥ずかしそうにもじもじしていた。
アレンはそんなクラリスを見て、可愛いと思った。
そして台本に書かれている通りに声をかける。
「よく似合ってるよ」
「……ありがとうございます」
クラリスはさらに恥ずかしそうにする。
「当たり前ね」
セレスティアが当然のように答えた。
「私が選んだのだから」
「何を恥ずかしがっているのよ」
セレスティアがクラリスを見る。
「なんで皆さんは平気なんですか!」
クラリスが叫んだ。
「ここには私たちとアレンしかいないわ」
「それが問題なんです!」
「アレンさんに見られてもなんとも思いませんわ」
リリアが平然と言った。
「アレンさんがいるんです!」
クラリスがさらに叫ぶ。
リリアは本当に不思議そうな顔をしている。
「クラリスさん、水着も下着も布一枚で同じですよ。恥ずかしがる意味が分かりません」
「………………」
「…………………」
「…………………」
その場に沈黙が流れた。
クラリスは少し考えてから、困ったように口を開く。
「……下着見られたらめっちゃ恥ずかしいです」
「……そうでしょう?」
クラリス自身が、自分の言葉で違いを説明してしまった。
リリアも何かに気づいたように黙り込む。
「リリアは平気そうね」
セレスティアが言う。
「……………ノーコメントでお願い」
リリアは視線を逸らした。
アレンは思った。
この世界にも、ちゃんと普通の感覚を持っている人はいるらしい。
その後は、ダンジョンランドのプールを存分に楽しんだ。
ウェータースライダーでは、二人一組になってラッコのような姿勢で滑る。
アレンも台本通りに参加した。
勢いよく滑り出した瞬間、水しぶきが舞う。
「うわあああああ!」
思っていた以上の速度だった。
だが、楽しい。
ものすごく楽しい。
アレンは思った。
今までセレスティアに台本を渡され、理不尽なこともいろいろあった。
しかし――
今までの理不尽なことも、全て許せる。
それくらい楽しかった。
さらに休憩時間には、アレンが全員の背中に日焼けクリームを塗った。
前世でも経験したことがない。
アニメの世界だけのイベントだと思っていたことを、今、自分が経験している。
アレンは感慨深く思った。
そして、ある決意をする。
いつもセレスティアが台本を作っている。
だったら次は、自分がしたいことを台本にしてもらえばいい。
「次は俺がしたいことを、セレスティアに台本にしてもらおう」
アレンはそう決意した。
次の台本は、自分が内容を決める。
そう考えるだけで、次の予定が楽しみになってきた。




