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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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リリアと町デート

リリアは、アレンのことを親切な人だと思っていた。


欲しいものを何でも買ってくれる。


武器も、防具も、魔道具も、食べたいものも。


自分が遠慮しても、「買えばいいだろ」と言ってくる。


アレン本人にとっては、たいしたことではないらしい。


だからリリアにとってアレンは、少し変わっているが、とても親切な人だった。


そんなリリアから、セレスティアに相談があった。


「セレスティアさん、またアレンさんと出かけたいのですが……」


その話を聞いたセレスティアは、すぐに動いた。


「では、第二回の町デートを開催しましょう」


そして用意されたのが、またしても台本だった。


「……なぜ俺はここにいるんだ」


アレンは台本を片手に、待ち合わせ場所で呟いていた。


前回もそうだった。


そして今回もそうだった。


セレスティアに呼び出され、台本を渡され、そこに書かれている通りに行動することになっている。


アレンとしては、まったく納得していない。


そもそも、なぜ自分がデートの台本を渡されているのか。


「……まあ、いいか」


考えても仕方がない。


そのとき、リリアがやってきた。


「アレンさん、お待たせしました」


アレンは台本を見る。


『リリアが来たら「今来たところだよ」と言う』


「今来たところだよ」


台本のセリフ通りだった。


実際には、かなり前から待っていた。


待っていたというより、台本を何度も読まされていた。


「では、行きましょう」


「ああ」


最初の指示は、手を繋ぐことだった。


アレンは台本を見る。


『移動中は手を繋ぐこと』


「……またか」


前回もそうだった。


今回も同じ。


アレンは諦めて手を差し出した。


リリアも素直に手を取る。


ぎゅっ。


「痛い」


「え?」


「いや……もう少し力を抜いてくれ」


「あっ、すみません」


リリアが慌てて力を緩める。


アレンは思った。


この娘は力が強い。


本人は普通に手を繋いでいるつもりなのだろうが、アレンにとっては普通ではない。


「これくらいで大丈夫ですか?」


「ああ」


二人はそのまま町を歩き始めた。


最初に向かったのは迷路だった。


「迷路?」


リリアが首を傾げる。


「そうらしい」


アレンは台本を見る。


『リリアが迷路に挑戦する。アレンはゴールで景品を持って待つ』


「……」


「アレンさん?」


「いや、何でもない」


アレンはゴールへ向かった。


そして景品を持って待つ。


迷路に入ったリリアは、最初こそ楽しそうに進んでいた。


しかし――。


「ゴール!」


「早いな」


あっという間だった。


「景品です」


「はい」


アレンは景品を渡す。


リリアは嬉しそうに受け取った。


「ありがとうございます」


「……次だな」


次はボーリングだった。


「これはどうするんですか?」


「球を投げて、全部倒せば景品」


「なるほど」


リリアがボールを持つ。


アレンは少し不安になった。


「力加減は普通でいいぞ」


「はい」


リリアが投げる。


ボールは真っ直ぐ進み――。


全部のピンを吹き飛ばした。


「ストライク!」


「景品だな」


「ありがとうございます!」


リリアが嬉しそうに景品を受け取る。


二投目。


「ストライク!」


「またか」


三投目。


「ストライク!」


「……」


アレンは黙って景品を渡した。


リリアは楽しそうだった。


アレンは台本を見る。


『ストライクを出すたびに景品』


「……これ、景品がなくならないか?」


しかし、なくなるのはアレンの景品だった。


次はダーツ。


『中心に刺さるたびに景品』


リリアが投げる。


真ん中。


「景品です」


二本目。


真ん中。


「景品です」


三本目。


真ん中。


「……景品」


アレンは淡々と渡していく。


「アレンさん、ここも楽しいですね」


「そうだな」


リリアは完全に楽しんでいる。


アレンだけが、自分が何をしているのか分からなくなっていた。


そして次はアスレチック。


「今度は私が挑戦するんですね」


「そうらしい」


「アレンさんは?」


「俺はゴールで待ってる」


「分かりました」


リリアは勢いよくアスレチックへ向かっていった。


アレンはゴールで景品を持って待つ。


しばらくすると――。


「ゴール!」


「早いな……」


「簡単でした」


「そうか」


また景品を渡す。


リリアはそれを嬉しそうに受け取った。


アレンは改めて今日の内容を思い返した。


迷路。


リリアが挑戦する。


自分はゴールで待つ。


ボーリング。


リリアがストライクを出す。


自分が景品を渡す。


ダーツ。


リリアが中心に当てる。


自分が景品を渡す。


アスレチック。


リリアが挑戦する。


自分はゴールで待つ。


「……」


アレンは台本を閉じた。


これは本当にデートなのだろうか。


前回とは違う。


前回は買い物だった。


今回は町の施設を回っている。


だが、どちらもアレンが何かをするというより、リリアが楽しんで、アレンがそれを用意する形になっている。


「まあ、リリアが楽しそうだからいいか」


アレンがそう考えていると、リリアが近づいてきた。


「アレンさん」


「ん?」


「今日はありがとうございました」


リリアは嬉しそうに笑っている。


「とても楽しかったです」


「そうか」


「はい」


リリアは今日一日を思い返していた。


迷路。


ボーリング。


ダーツ。


アスレチック。


どれも楽しかった。


そして、最後にはアレンが用意してくれた景品もある。


「アレンさんは、本当に親切な人ですね」


「そうか?」


「はい」


リリアは笑った。


そして、お礼をする。


アレンは突然のことに固まった。


「……」


リリアはそのまま離れる。


アレンはしばらく動かなかった。


そして、手元の台本を見る。


最後まで台本通りに進めた。


「……なんだこれ」


前回もそうだった。


今回もそうだった。


セレスティアの台本に従って一日を過ごしただけなのに、最後にはよく分からないことになっている。


「俺、何してるんだろうな……」


遠くでは、リリアが今日もらった景品を嬉しそうに眺めていた。

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