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第二回要望箱

アレンはマスタールームから、ダンジョンの様子を眺めていた。


 最近では、上級冒険者が定期的に訪れるようになっている。


 だが、同じ顔がずっと滞在しているわけではない。


 ある上級冒険者が必要な素材を集め終える。


 すると、その冒険者は武器や防具を更新し、さらに上のダンジョンへ挑戦するために出ていく。


 しばらくすると、別の上級冒険者がやって来る。


 そして、その冒険者も必要なものを集め終えれば、また次のダンジョンへ向かっていく。


「定期的に来るようにはなったけど、定着はしないな」


 アレンはダンジョンの入り口を眺めながら呟いた。


 インゴット専用ガチャのおかげで、上級冒険者が訪れるようにはなった。


 しかし、装備を整えるための場所として利用されているだけで、いつまでもここに留まるわけではない。


「まあ、来てくれるだけでも前よりはいいか」


 そう考えたところで、アレンは別のことを思い出した。


「そういえば、そろそろか」


 第二回要望箱の当選発表の日だった。


 今回も大量の要望が集まっている。


 内容を確認すると、相変わらず多かったのはガチャの出現率を変更してほしいという要望だった。


「またこれか」


 欲しい物の出現率を上げてほしい。


 特定の商品をもっと出してほしい。


 そんな要望が大量に並んでいる。


「それは無理」


 アレンはあっさり却下した。


 そして今回、アレンが選んだ要望は――。


「便利な野営グッズが欲しい」


「これにするか」


 冒険者がダンジョンへ長時間潜るなら、野営用品は役に立つ。


 しかも、前回とは違う種類の景品になる。


 当選発表の日。


 ダンジョンの入り口には、前回以上の人が集まっていた。


「前より多くないか?」


 アレンはマスタールームから、その様子を眺める。


 上級冒険者だけではない。


 普段からダンジョンを利用している冒険者たちまで集まっている。


 やがて、当選番号の書かれた紙が出てきた。


 その番号を確認した冒険者の一人が、突然叫んだ。


「俺だー!」


 一瞬、周囲が静かになる。


 そして、すぐにざわめきが広がった。


「何をお願いしたんだ?」


「見せろよ!」


「今回は何が当たったんだ?」


 当選者の周囲に冒険者たちが集まる。


 本人も興奮した様子で、景品を取り出した。


「……なんだこれ?」


 出てきたのは、折り畳まれた布のようなものだった。


「布?」


「何に使うんだ?」


「広げてみろよ」


 当選者が布を広げようとした、その瞬間。


 パッ!


 一瞬で形が変わった。


「え?」


 そこに現れたのは、一つのテントだった。


 折り畳まれていた布が一瞬で展開され、骨組みまで組み上がっている。


「……」


 周囲が固まった。


 数秒の沈黙。


 そして――。


「なんだこれは!?」


「一瞬でテントになったぞ!」


「どういう仕組みだ!?」


「こんな野営道具があるのか!」


 一気に騒然となる。


 当選者本人も、目の前に突然現れたテントを見て呆然としている。


「俺が頼んだのは便利な野営グッズだけど……」


 自分で頼んでおきながら、本人も予想していなかったらしい。


 周囲の冒険者たちはテントの周りを取り囲み、あちこちから声が飛び交う。


「中はどうなってる?」


「畳めるのか?」


「これを持って歩けるのか?」


「一瞬で設置できるなら、野営が全然違うぞ!」


 アレンはマスタールームからその光景を眺めていた。


「……思った以上に盛り上がったな」


 前回の要望箱の当選発表でも、多くの冒険者が集まった。


 だが今回は、それ以上だ。


 そして景品そのものが、その場にいる冒険者たちの興味を一気に引きつけている。


「便利な野営グッズ、か」


 アレンはテントを眺める。


 ダンジョンに長時間潜る冒険者にとって、野営は避けて通れない。


 それが簡単になる道具なら、欲しがる人間が出てくるのも当然だった。


「これは……また何か始まりそうだな」


 アレンはそう呟きながら、テントを囲む冒険者たちの様子を眺めていた。

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