たまの召喚
アレンは召喚するなら何がいいか考えていた。
マスタールームには、ピーちゃん、クロノス、白がいる。
三匹ともアレンの周囲に集まり、何を召喚するのか見守っていた。
「竜、インコ、犬ときたら……次はやっぱり猫か」
アレンは真剣に考える。
「強い猫……強い猫……」
猫といえば普通は小さくて可愛らしい動物だ。
だが、アレンが召喚するのは普通の猫ではない。
「思いつく中で一番強い猫は……白虎か?」
白虎。
四神の一柱として知られる、SSランクの超高位モンスター。
「よし」
アレンは決めた。
「お前たち、今から白虎を呼ぶぞ」
「ピー」
「ワン」
「ガオー」
アレンが振り返る。
「クロノス、お前何やってんだ」
クロノスは気まずそうに口を閉じた。
「……忘れてくれ」
「まあいいか」
アレンは召喚陣へと向き直った。
「いでよ、白虎!」
召喚陣が強く輝く。
次の瞬間、巨大な白い虎が姿を現した。
その身体から放たれる威圧感は凄まじい。
白虎はゆっくりと周囲を見渡した。
そしてアレンを見下ろす。
「我を人間風情が呼ぶとは、いい度胸だ。死ぬ覚悟はしておるな」
威厳のある声がマスタールームに響く。
だが、その直後だった。
「ピー」
ピーちゃんが一声鳴いた。
白虎がピーちゃんを見る。
小さな鳥。
見た目だけなら、何の脅威も感じない。
しかし――。
ピーちゃんから放たれた力を感じた瞬間、白虎の表情が変わった。
SSランク。
それが白虎の持つ力。
だが、目の前にいる小さな鳥は、それを遥かに上回る。
EX+。
ピーちゃんは、白虎が抗えるような存在ではなかった。
ピーちゃんが少しだけ力を見せる。
「ピー」
「……」
白虎は黙った。
そして――
ころん。
腹を見せた。
「ピーちゃんが力見せるのか?」
「ピー」
「なんか腹を見せてるよ」
アレンは白虎を見る。
「降参のポーズじゃないか」
白虎は何も言わない。
ただ、腹を見せたまま動かない。
「なんか最近見た記憶があるな」
「ワン」
白が鳴く。
「そうだよな、白も前にやってたな」
白虎は、まだ腹を見せている。
アレンは白虎を眺める。
「大きいな。猫のサイズになれ」
白虎の身体が光に包まれる。
巨大だった身体がみるみる縮んでいく。
やがて、そこにいたのは普通の猫より少し大きい程度の白い猫だった。
「これなら猫だな」
白虎はアレンを見上げる。
「……」
「お前の名前は今日からたまだ」
「ニャー」
「よし」
アレンは満足そうに頷いた。
「餌に魚をやろう」
たまは大人しくアレンの足元へ寄っていく。
その横で白がアレンを見上げる。
「ワン」
「なんだ、白も欲しいのか」
「ワン」
「よし、肉をあげよう」
白の尻尾が揺れる。
アレンはたまと白を見る。
「たまは当面、勇者と戦闘訓練だぞ」
「ニャー」
「これ流行ってるのか?」
クロノスは首を傾げる。
ピーちゃんはいつものように小さく鳴いている。
「ピー」
白は肉を食べている。
「ワン」
たまは魚を食べている。
「ニャー」
アレンは満足していた。
だが、その横ではクロノスが黙り込んでいた。
ピーちゃんはEX+。
自分はEX。
たまはSS。
白はS+。
強さだけなら、自分はこの中でも上位にいる。
それなのに――。
「……我は何なのだ?」
クロノスは自分のキャラクターについて悩み始めた。
竜。
しかもEXランクのエンシェントドラゴン。
本来なら圧倒的な存在感があってもおかしくない。
なのに、目の前ではインコが白虎を降参させ、犬と猫が仲良く餌を食べている。
そして自分は、召喚された白虎に対して「ガオー」と鳴いていた。
「……我も何か、特徴を持つべきなのではないか」
クロノスの悩みは深かった。




