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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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元勇者のお仕事

元勇者は79階層に家をもらった。


福利厚生らしい。


「福利厚生って、家まで含まれるのか?」


元勇者は、与えられた家を見回しながら首を傾げていた。


部屋は十分な広さがあり、生活に必要なものも一通り揃っている。


さらに、79階層から1階層へ移動するためのエレベーターまである。


エレベーターで1階層にいつでもいける。


「わざわざ歩いて下まで行かなくていいのは助かるな」


元勇者はエレベーターを使って1階層まで降りてみた。


そして、帰るときもエレベーターに乗る。


これだけ便利なら、79階層に住んでいること自体は問題にならない。


「しかし……」


元勇者は苦笑する。


「ダンジョンに雇われるなんて考えたこともなかったな」


そもそも、ダンジョンは冒険者にとって攻略する場所だ。


そこで働くなど、以前の自分なら想像もしなかっただろう。


仕事内容はクロノスや白との模擬戦で、どちらかが降参したら終わり。


実に単純な仕事だった。


今日も元勇者は白と向かい合っていた。


「よろしく頼む」


「ワン」


白が一声だけ返す。


そして模擬戦が始まる。


白との戦いは、互いに一歩も譲らない。


元勇者が攻めれば白が受け、白が攻めれば元勇者がかわす。


何度も戦っているうちに、二人の実力は拮抗していった。


白との対戦成績は5勝5敗。


いい勝負だ。


「本当に五分五分だな」


「ワン」


白はいつものように一声だけ返した。


だが、クロノスとの模擬戦になると状況は一変する。


「次は我か」


「頼む」


元勇者は構える。


クロノスも構えた。


戦いが始まる。


元勇者は持てる力をすべて使って食らいつく。


一撃をかわし、次の攻撃を狙う。


だが、クロノスの強さは別格だった。


どれだけ攻めても決定的な隙がない。


逆に、クロノスの攻撃を一度受けるだけで、元勇者は大きく消耗する。


そして――


「……降参だ」


元勇者が手を上げた。


「そこまでだな」


クロノスが戦いを止める。


元勇者は息を整えながら、自分の状態を確認した。


クロノスが元勇者に告げる。


「今ので25%削られたぞ」


「25%か……」


元勇者は少し考え込む。


一人では、まったく勝てる気がしない。


だが、人数が増えればどうだろう。


「四人いたら、あるいは……」


元勇者が呟く。


クロノスが眉を動かした。


「四人?」


「いや、なんでもない」


元勇者はそう言って立ち上がる。


負けた。


だが、それで諦めるわけではない。


翌日になれば、またクロノスの前に立つ。


「今日もやるのか?」


「もちろん」


元勇者は即答した。


そんな毎日だった。


元勇者の給料は出来高で、試合をする度に貰える。


日給40万だ。


しかも、装備の修繕は無償。


戦って装備が壊れても、費用を気にする必要はない。


怪我をした時のポーションも無償で使い放題。


さらに、ダンジョンランドの施設が無料。


「本当にいい待遇だな……」


元勇者は改めて思う。


戦えば金がもらえる。


装備の修繕費はかからない。


怪我をしてもポーションを使える。


それでいて、ダンジョンランドまで無料で利用できる。


「ダンジョンに雇われるなんて考えたこともなかったな」


元勇者は苦笑した。


冒険者として生きていた頃には、こんな生活が待っているなど考えもしなかった。


しかも、仕事そのものは自分が好きな戦いだ。


負けても給料は出る。


勝てばもちろん、それだけ自分の成長を実感できる。


だからこそ、元勇者は今日も戦う。


そしてクロノスも、そんな元勇者を相手にすることでポイントを稼ぐことができる。


「元勇者が毎日挑んでくるが、ストイックじゃな」


クロノスがアレンに話しかける。


「おかげでポイントがすごい」


アレンはダンジョンのポイントを確認しながら答えた。


模擬戦が行われるたびにポイントが入ってくる。


元勇者は毎日挑んでくる。


その結果、ポイントの増え方もかなりのものになっていた。


「対戦相手が二人は少ないぞ」


クロノスが言う。


現在の対戦相手は、クロノスと白の二人。


白とは五分。


クロノスには勝てない。


それでも元勇者は毎日挑んでくる。


「確かにな」


アレンも考える。


元勇者の戦闘意欲を考えれば、相手は多い方がいい。


それに、今後のこともある。


「いずれ次のダンジョンを落とすために、次のダンジョンマスター候補を召喚するか」


アレンが言った。


「次のダンジョンか」


クロノスが反応する。


「ああ。今後もダンジョンを増やしていくなら、戦力は必要になる」


「なるほどな」


クロノスはそう答えた。


元勇者とアレンが直接顔を合わせることはない。


元勇者の模擬戦の様子や戦績は、クロノスからアレンへ伝えられている。


「新しいダンジョンマスター候補を召喚すれば、対戦相手も増えるな」


「そういうことだ」


アレンは次の召喚について考え始めた。


次のダンジョンを落とすための戦力。


そして、毎日のように戦いを求めてくる元勇者の対戦相手。


どちらにとっても、新しいダンジョンマスター候補を召喚する意味はあった。

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