ダンジョンは国土?
アレンのダンジョンが大きくなったことで、大きな問題が起きていた。
それは、ダンジョン内で行われる商取引の扱いだった。
普通、王国内で商売をすれば税金がかかる。
商品を購入すれば消費税がかかり、商人が商品を販売して利益を得れば法人税がかかる。
ところが、ダンジョン内で商品を販売した場合、法人税がかからない。
ダンジョン内での取引が、王国の税制の対象になっていなかったからだ。
もちろん、ダンジョン内で販売する商品を周辺の領地から仕入れれば、その段階で税金は払っている。
ダンジョンで購入した商品を領地に持ち出して販売すれば、そこで税金もかかる。
それでも、ダンジョン内で商売をする者だけが、販売時の法人税を免れている。
これを不公平だと感じる商人が現れた。
「なぜ我々は税金を払っているのに、ダンジョンの中で商売する者だけ払わなくていいのか」
商人たちは王国へ訴え出た。
当然の主張にも聞こえる。
しかし、王国側はすぐに答えを出すことができなかった。
なぜなら、王国の法律はそもそもダンジョンの中に町ができることを想定して作られていなかったからだ。
ダンジョンとは、本来なら魔物が棲み、冒険者が魔石や素材を求めて潜る場所。
そこに人が住み始めることなど、誰も想像していなかった。
ましてや、その中で商人が店を構え、商品を売り、宿を経営し、娯楽施設まで運営する。
そんな場所を法律は想定していない。
そして、さらに根本的な問題があった。
「そもそも、ダンジョンは王国の一部なのか?」
会議の場で、その言葉が出た。
「当然、王国内にあるのだから王国の一部でしょう」
「では、ダンジョンの所有者は誰だ?」
「……」
言葉が止まる。
土地なら領主がいる。
街なら行政を担う者がいる。
しかし、ダンジョンは違う。
アレンのダンジョンには、王国から任命された領主はいない。
王国が税を徴収しているわけでもない。
それどころか、ダンジョン内には王国が整備した町ではなく、ダンジョン側が作った町が存在している。
「では、王国法はダンジョン内部にも適用されるのか?」
「適用されるなら、誰が執行する?」
「税金は誰が徴収する?」
「ダンジョン内で犯罪が起きた場合、誰が裁く?」
次々と問題が出てくる。
一つの税金の問題だったはずなのに、話はいつの間にか国家そのものの問題へと変わっていた。
そして会議の議題は、いつしか一つに絞られていた。
――ダンジョンは王国の一部なのか。
その答えを、誰も持っていなかった。




