冒険者流出
「新しいダンジョンの冒険者を、こっちのダンジョンが奪ってしまったな」
アレンがマスタールームのモニターを眺めながら呟いた。
新しく制圧したダンジョンとの接続が開通してから、向こうの冒険者たちは次々とこちらへ移動してきている。
特に一階層の町を見た冒険者たちは、その便利さに驚き、こちらを活動拠点にする者まで出始めていた。
「予想通りですわ」
セレスティアは特に驚いた様子もなく答えた。
「私のダンジョンを自由に行き来させていない理由、分かったでしょう?」
「まあな」
アレンも納得していた。
「冒険者が移動できるようにすれば、便利な方へ流れる。二つのダンジョンが同じ国にあったとしても、冒険者の数そのものが増えるわけじゃない」
「その通りですわ」
「二つのダンジョンの合計で見れば、冒険者の数は変わらない。こっちに移った分だけ、向こうが減るだけだ」
「ええ」
セレスティアは頷いた。
「ただし、冒険者以外なら話は変わりますわ」
「移住者か」
「そうです」
町としての利便性を知った商人や職人。
さらに宿屋や飲食店を営む者。
ダンジョンの中で暮らすことを選ぶ住民も、少しずつ現れ始めていた。
「こいつらは元のダンジョンの冒険者数には影響しないからな」
「こちらから見れば、純粋な増加ですわ」
「なるほどな」
アレンはモニターを眺める。
「領主からしたら、たまったもんじゃないわね」
「税を払う住民が移住してしまうわけですから」
「しかも移住先は別の領地……いや、そもそもダンジョンの中か」
「領主にとっては頭の痛い話でしょうね」
セレスティアは苦笑した。
しかし、アレンは肩をすくめた。
「ダンジョン側の視点でいえば、どうでもいい話だな」
「まあ、そうですわね」
「住民が増えれば町が賑わう。店が増えれば金も動く。ダンジョンとして困ることはない」
「だからこそ、私のダンジョンでは一般開放をしないのですわ」
「お前は慎重だな」
「当然ですわ」
セレスティアはきっぱりと言った。
「一度、人の流れを作ってしまえば、それを止めるのは簡単ではありませんもの」
「まあ、お前のダンジョンだから好きにしたらいいよ」
「そうさせてもらうわね」
セレスティアは満足そうに微笑んだ。
アレンは再びモニターへ視線を戻す。
新しく制圧したダンジョン。
そこにもモンスターがいて、冒険者がいて、町がある。
そして何より――。
「さて……」
アレンは腕を組んだ。
「制圧したダンジョンでも、ポイントがお得になる手段を考えてみるか」
「まだポイントのことを考えているのですか?」
「当然だろ」
アレンにとって、ダンジョンを増やしたことよりも重要な問題だった。
「ダンジョンが増えたなら、稼ぎ方も増やせるはずだ」
セレスティアは呆れたようにアレンを見る。
「本当に、そういうところだけは変わりませんわね」
「褒め言葉として受け取っておく」
「褒めてませんわ」




