ダンジョン間の移動
アレンはセレスティアと、制圧したダンジョンについて話していた。
「ダンジョン間の移動の方法は考えているの?」
セレスティアが地図を見ながら尋ねる。
「魔法陣に乗ったら転移、なんて罠にしか見えんよな」
「そうですわね。何も知らない人間からすれば、地面に描かれた魔法陣に乗ってくださいと言われても、素直には乗りませんわ」
「商人や冒険者の移動を考えているのよね」
「そうなんだけど」
アレンは地図上の二つのダンジョンを見比べる。
「王都への移動距離が近くなれば、商人が殺到してたからな」
「王都までの距離が短くなるだけで、そこまで変わりますものね」
「商人にとって移動時間はそのまま商売の効率になるからね」
「でしたら、今回のダンジョンもかなりいい場所ですわ」
「うん。試すにはちょうどいい」
セレスティアは地図を覗き込む。
「ただ、人がこちらのダンジョンに泊まって、向こうのダンジョンで活動するとなると、ポイントはどうなりますの?」
「うちのダンジョンで寝泊まりして元のダンジョンで活動してもらえば、プラマイゼロね」
「確かに、二人のダンジョンのポイントを見れば同じくらいですわね」
「つまり、制圧したダンジョンを発展させなければ、ポイントはうまくない」
セレスティアは少し考える。
「人を移動させるだけでは、ポイントを増やすことには繋がらないということですわね」
「そういうこと」
「それなら、向こうのダンジョンにも人を滞在させる必要がありますわ」
「でも、ポイントが目的じゃないから」
「……そうでしたわね」
セレスティアは苦笑する。
「アレンにとっては、ポイントを増やすことよりも、ダンジョンそのものを増やすことのほうが重要でしたわ」
「そう。だからマイナスにならなければいいのよ」
「でしたら、無理に向こうへ人を集める必要もありませんわね」
「最初はね」
「最初は?」
「人が増えれば、勝手に発展するから」
アレンは地図を指でなぞる。
「商人が使えば、その周辺に店ができる。冒険者が使えば宿や食堂ができる。人が増えれば、そこで商売を始めたい人も出てくる」
「そして、町が大きくなる」
「そういうこと」
「ならば、最初に必要なのは人を呼び込む仕組みですわね」
「その通り」
アレンは少し考える。
「セレスティアと同じ洞窟検問方式にするか」
「私が使っている方式ですわね」
「うん。ダンジョン同士を洞窟で繋ぐ」
「転移魔法陣ではなく?」
「魔法陣に乗ったら別の場所に飛ばされるなんて、どう考えても罠に見えるからね」
「洞窟なら、少なくとも見た目は普通ですわ」
「入口と出口に検問所を作ればいい」
「身分証の確認や、危険物の持ち込みなども管理できますわね」
「でも、通行は自由で」
「通行料は取らないのですの?」
「取らない」
セレスティアが少し驚いた顔をする。
「無料ですの?」
「人が通れば、それだけ周辺で金を使うからね。わざわざ入口で金を取る必要はないよ」
「商人にとってはありがたい話ですわね」
「特に荷物が多い商人ほど、移動距離が短くなる恩恵は大きい」
「そうなると、こちらを経由する商人が増えますわ」
「それが狙い」
セレスティアは地図を見ながら、さらに先を考える。
「商人が増えれば、向こうのダンジョンにも商品が集まりますわね」
「うん」
「冒険者も移動時間が短くなれば、その分だけ活動時間を増やせますわ」
「宿泊して、朝から向こうで活動することもできる」
「そして夜になれば、こちらへ戻ってくる」
「そう」
「結果として、二つのダンジョンが一つの経済圏のようになりますわね」
アレンは頷いた。
「最初から全部を作る必要はないよ。道だけ作って、人が使えるようにする」
「人が増えれば、必要なものは後から自然に増えていく」
「そういうこと」
セレスティアは地図から顔を上げた。
「転移魔法陣より、ずっと分かりやすいですわね」
「実際に歩いて行けるからね」
「ただ、ダンジョンを通る以上、冒険者は警戒すると思いますわ」
「そこは最初の検問所で説明する」
「何を説明しますの?」
「この道は二つのダンジョンを自由に行き来するための道です、って」
「それだけですの?」
「それだけ」
セレスティアは少し考えたあと、笑った。
「相変わらず、アレンは余計なことをしませんわね」
「必要なものだけあればいいからね」
「では、まずは道を作りましょう」
「うん」
アレンは地図の上で、二つのダンジョンを指で繋いだ。
新しく制圧したダンジョン。
そして、これまで人が集まってきた自分のダンジョン。
その二つを一本の道で繋ぐ。
それは単なる移動路ではない。
人と物を動かすための、新しい流れの始まりだった。




