13階層の追加
要望箱の結果発表が終わって数日。
アレンは冒険者たちの動向を確認していた。
「やっぱり、上級冒険者は来なくなったな」
結果発表には、普段なら来ないような上級冒険者まで集まっていた。
しかし、発表が終わると、その姿はほとんど見なくなった。
「エントリーと結果発表のときだけか」
アレンは少し考える。
せっかく普段来ない冒険者を呼び込めたのだから、継続して来てもらえる仕組みが欲しい。
「何か、何度も欲しくなるもの……」
そこでアレンは、要望箱の景品を思い出した。
「インゴットか」
武器や防具を作る冒険者なら、インゴットはいくらあっても困らない。
アレンは新しいガチャを作った。
インゴット専用ガチャ。
一回に必要な魔石は四十個。
出てくるのはランダムな種類のインゴット。
ただし、一回につき一キログラム。
「一キロじゃ剣を一本作るにも足りないな」
だからこそ、必要な量を集めるまで何度も回すことになる。
「これなら、何度も来る理由になるだろ」
アレンはインゴット専用ガチャを十階層以降に設置した。
その翌日。
「……なんだこれ」
アレンはダンジョン内の様子を見て驚いた。
十階層以降に冒険者が殺到していた。
インゴットを求める上級冒険者が次々とやって来て、ガチャを回すために魔石を集めている。
「来すぎだろ」
上級冒険者を呼び込むことには成功した。
だが、今度は混雑してしまった。
「このままだと邪魔になるな」
アレンは少し考えた。
「だったら、階層を増やせばいいか」
こうして十三階層を追加した。
さらに十三階層には、新しいピックアップガチャを設置する。
今回のピックアップは――。
石鹸。
シャンプー。
リンス。
「インゴットとは違う需要も作っておけば、人も分散するだろ」
十三階層が追加されたことで、冒険者たちは目的に応じて進む階層を選べるようになった。
そして、ここで新たな問題が起きた。
十一階層から十三階層まで利用する者が増えたことで、騎士団同士が話し合いを始めたのだ。
「どの階層を使うか決めておいたほうがいいだろう」
「我々も同じ意見だ」
それぞれが好き勝手に活動すれば、狭い場所で混雑してしまう。
協議の結果、三つの階層をそれぞれの活動場所として使い分けることになった。
十一階層は騎士団。
十二階層は上級冒険者。
十三階層は隣領の騎士団。
いつの間にか、それぞれの階層が縄張りのようになっていった。
「騎士団同士でちゃんと話し合ったのか」
アレンはその様子を眺めながら呟く。
正式に誰かが所有権を主張したわけではない。
ただ、それぞれが継続して利用する場所を決めたことで、自然と住み分けができたのだ。
十一階層ではこちらの騎士団。
十二階層では上級冒険者。
十三階層では隣領の騎士団。
それぞれが自分たちの目的に合わせてダンジョンを利用している。
「まあ、揉めるよりはいいか」
アレンにとっても悪い話ではなかった。
利用者が分散すれば混雑も減る。
しかも、どの階層にも継続して通ってくれる客がいる。
「最初は人が来なくて困ってたのにな」
アレンはマスタールームからダンジョンを眺める。
不人気だったダンジョンは、いつの間にか騎士団や上級冒険者が自分たちの活動場所を決めるほどの場所になっていた。




