要望の結果
アレンは、設置した要望箱の中を確認していた。
「さて、どんな要望が来てるかな」
中には大量の紙が入っている。
一枚ずつ確認していくと、同じような内容が何度も出てきた。
『回復薬の出現率を上げてほしい』
『水の出現率を上げてほしい』
『食料の出現率を上げてほしい』
『酒の出現率を上げてほしい』
「……すでに排出されているアイテムばっかりだな」
冒険者たちは、現在のガチャに入っているアイテムを気に入っているらしい。
だからこそ、もっと出してほしいという要望が多かった。
「これを叶えても、新しい冒険者を呼び込むことにはならないな」
今まで来ている冒険者が喜ぶだけだ。
新規の冒険者が、このダンジョンを目指す理由にはならない。
「却下」
アレンはそう判断した。
そして応募された要望の数を確認する。
「三百五十四通か」
一人一通なら三百五十四人。
一人あたり百ポイント分の景品なら、三万五千四百ポイント。
「三万五千四百円以下なら赤字にはならない」
アレンはしばらく考えた。
そして、ある景品を思いつく。
「よし、決めた」
アレンが選んだのは――
鋼のインゴット十キロ。
「異世界人に地球の技術力を見せてやる」
こうして、第一回要望箱抽選の日を迎えた。
その日、ダンジョンには多くの冒険者が集まっていた。
「俺の要望が通ってるかもしれないぞ」
「俺は回復薬の出現率を上げてくれって書いた」
「俺は酒だ」
「俺は食料!」
冒険者たちは、それぞれ自分の要望が採用されていることを期待している。
そして時間になる。
要望箱が開いた。
中から出てきたのは、一枚の紙。
そして、その横には大きな鋼のインゴットが置かれていた。
「なんだ、あれ?」
「インゴット?」
「景品はあれなのか?」
冒険者たちがざわめく。
紙には当選番号が書かれている。
集まった冒険者たちは、一斉に自分の番号を確認した。
「……!」
一人の冒険者が目を見開いた。
「俺だ!」
周囲から歓声が上がる。
「おめでとう!」
「何が当たったんだ?」
当選した冒険者は、期待しながら景品を見る。
そして――
「……インゴット?」
少しだけ肩を落とした。
「剣とかじゃないのかよ……」
本人は完成した武器を期待していたらしい。
それでも、当選した景品を持ち帰る。
そして、その鋼を馴染みの鍛冶屋へ持っていった。
「これを剣にしてくれ」
「なんだ、この素材は?」
鍛冶屋はインゴットを見る。
次の瞬間、目の色が変わった。
「こ、これは……!」
インゴットを手に取り、何度も確認する。
「どこで手に入れた!?」
「ダンジョンの抽選だ」
「ダンジョンでこんな素材が出たのか!?」
鍛冶屋はすっかり興奮していた。
「これで剣を作っていいのか?」
「ああ」
「代金はいらねえ!」
「え?」
「余った素材を貰うだけでいい!」
鍛冶屋は喜々として剣を作り始めた。
そして完成した剣を冒険者が手に取る。
試しに振ってみる。
「……すごい」
丈夫で、切れ味も抜群だった。
その剣の噂は、すぐに冒険者たちの間へ広がった。
「あの抽選で出たインゴット、凄い剣になったらしいぞ」
「そんなに凄いのか?」
「鍛冶屋が素材を欲しがるくらいだ」
「次は俺が当ててやる!」
鋼のインゴットは話題になった。
しかし――
一か月後。
また抽選の日になると、冒険者たちが集まってきた。
「今日は抽選の日だ!」
「今度こそ当てるぞ!」
要望箱の前には大勢の冒険者が集まっている。
そして抽選が終わると、冒険者たちは帰っていった。
アレンはマスタールームから、その様子を眺めていた。
「……あれ?」
抽選の日以外、冒険者が増えた様子はない。
鋼のインゴットは話題になった。
完成した剣も話題になった。
それでも冒険者たちは、月に一度の抽選日に集まってくるだけだった。
「応募と当選確認にしか来てないじゃないか」
アレンは頭を抱えた。
「これじゃ、新規冒険者を呼び込むどころか、月一イベントを作っただけだぞ」
アレンが期待した地球の技術力アピールは、思ったような集客効果を生まなかった。
「……次は別の方法を考えるか」
アレンは要望箱を見つめながら、次の集客方法を考え始めた。




