↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/421

要望箱

「そういえば、俺ってマスタールームから出られないのか?」


アレンはふと疑問に思った。


ダンジョンマスターになってからというもの、ずっとマスタールームからダンジョンの様子を眺めている。


せっかくダンジョンを運営しているのだから、一度くらい自分で外に出てみたい。


『出ることはできますよ』


「出られるのか」


『ダンジョン内であれば、自由に移動できます』


「じゃあ、ちょっと出てみようかな」


アレンはそう思ったが、すぐに別の問題に気づいた。


「俺、レベル1だよな?」


『はい』


「ダンジョンのモンスターに襲われたりは?」


『ダンジョンマスターを攻撃することはありません』


「それなら安心……いや、冒険者は?」


『冒険者には関係ありません』


「だよな」


アレンは頭を抱えた。


ダンジョンのモンスターから襲われる心配はない。


しかし、冒険者から見れば、ダンジョン内を歩いている人間がダンジョンマスターだなんて分からない。


普通に敵だと思われる可能性がある。


「俺がレベル1なのも問題だな」


『ダンジョン内のモンスターを倒しても、アレン様のレベルは上がりません』


「冒険者を倒せば?」


『レベルは上がります』


「それは無理」


即答だった。


「冒険者を倒してレベルアップなんてしたくない」


戦闘能力を上げる方法がないわけではない。


『ポイントを使用すれば、レベルを上げることも可能です』


「それなら……」


アレンは少し考えた。


「いや、それでも自分で戦うつもりはない」


ダンジョンマスターになったのだ。


わざわざ自分からモンスターや冒険者と戦う必要はない。


戦うのは冒険者。


自分は管理する側。


それがアレンの理想だった。


「そもそも、冒険者が何を求めているのか分からないんだよな」


アレンは10階層の様子を眺める。


最近は冒険者だけではなく、ベテラン冒険者や軍まで10階層を利用するようになっている。


物々交換も始まり、ダンジョンの利用方法はどんどん変化していた。


「だったら、直接聞けばいいか」


アレンは10階層に新しい設備を追加することにした。


ガチャの横に、小さな箱を設置する。


箱には文字が書かれている。


『要望箱』


「魔石を10個入れて、要望を書いてもらう」


冒険者が紙に要望を書き、魔石10個と一緒に箱へ入れる。


すると、箱から番号札が一枚出てくる。


「そして、月に一人だけ、その中から要望を叶える」


要望を書いた本人には番号札が渡される。


月末に一つの番号が選ばれ、その番号札を持っている冒険者の要望が実現する。


「これなら、無茶な要望ばかり集まることもないだろ」


魔石10個という参加料もある。


「何より、俺にとって一番重要なのは……」


アレンは要望箱を眺めた。


「冒険者が何を欲しがっているのか分かることだ」


ダンジョンマスターであるアレンには、冒険者の行動を見ることはできる。


だが、行動だけでは分からないことも多い。


食料が欲しいのか。


武器が欲しいのか。


防具が欲しいのか。


便利な道具が欲しいのか。


それとも、もっと別の何かなのか。


要望箱なら、それを直接知ることができる。


「これで冒険者が欲しがっているものを出せるようになれば、もっと人が来るかもしれないな」


アレンは満足そうに頷いた。


ダンジョンを強くする。


モンスターを強くする。


そんなことよりも――


冒険者が来たくなるダンジョンにする。


それがアレンにとって、一番重要だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。