12階層
十一階層が混雑してきた。
冒険者だけでなく、騎士団まで活動するようになり、あちこちで人が戦っている。
アレンは魔道具に映る十一階層を眺めていた。
「さすがに混んできたな」
このままでは十一階層に人が集まりすぎる。
「十二階層を作るか」
アレンはダンジョンコアを操作し、新しい階層を作った。
十一階層の下に、十二階層が完成する。
さらにガチャも設置する。
「今回のピックアップは布か」
十二階層のガチャには、布が出やすくなるピックアップが設定されていた。
「まあ、布なら使い道も多いだろ」
その頃、十一階層では二つの騎士団が向かい合っていた。
「このまま同じ場所で活動するのは面倒だな」
「そうだな」
どちらも十一階層を使いたい。
そこで、どちらが十一階層を主戦場にするかを決めるため、打ち合わせが行われていた。
「十一階層は譲ってくれ」
こちらの騎士団長が切り出した。
「どうしてだ?」
「俺たちは十階層との往復が必要なんだ」
こちらの騎士団は、食料などを十階層のガチャで確保している。
十一階層で活動するためには、必要に応じて十階層まで戻らなければならない。
「そちらは違うだろう?」
騎士団長が隣領の騎士団を見た。
隣領の騎士団は、大量の食料や水、野営道具を持ち込んでいる。
「こちらは必要な物資をすべて用意してきた」
「ああ」
「だから、十階層との往復は必要ない」
「なら、十二階層へ移ってくれないか?」
隣領の騎士団長は少し考える。
「分かった。こちらは十二階層へ移ろう」
「助かる」
こうして、十一階層はこちらの騎士団、十二階層は隣領の騎士団が主に使うことになった。
隣領の騎士団には、十二階層へ移る理由もある。
「十二階層のガチャも調べられる」
「そうだな」
彼らの目的は化粧品だ。
酒を目当てに来る冒険者から化粧品を手に入れようなどとは考えていない。
自分たちでガチャを回し、化粧品を手に入れる。
そのために必要な物資も、すでに準備してきている。
十二階層でもガチャを回しながら、目的の化粧品が出るまで活動するつもりだった。
一方、こちらの騎士団は事情が違う。
「十階層で交換を利用すればいいからな」
「ああ」
十階層では、すでに冒険者同士の交換が活発になっている。
酒を欲しがる冒険者と、化粧品を欲しがる冒険者。
それぞれが欲しい物を交換している。
こちらの騎士団は、その状況を知っている。
だから、自分たちで化粧品を引き当てる必要はない。
十階層と十一階層を行き来しながら、交換を利用すればいい。
ただし、そのことを知らないのは隣領の騎士団だけだった。
隣領の騎士団は、冒険者同士の交換がここまで活発になっていることを知らない。
自分たちでガチャを回して化粧品を手に入れる。
そのために大量の物資まで持ち込んできた。
「これで、十一階層を譲ってもらえたな」
「こちらとしても助かる」
「なら、十二階層へ移動するぞ」
「ああ」
二つの騎士団は、それぞれ別の階層へ向かった。
こちらの騎士団は十一階層へ。
隣領の騎士団は十二階層へ。
結果として、十一階層の混雑は少し解消されることになった。
その様子を見ていたアレンは、魔道具から目を離した。
「十一階層が混んだから十二階層を作ったら、ちょうどいい感じに分かれたな」
そして、十二階層へ向かう隣領の騎士団を見る。
「それにしても、あそこまで準備して化粧品を自力で狙うのか」
アレンは苦笑する。
「まあ、長く滞在してくれるならいいか」
新しく作った十二階層にも、さっそく人が向かっている。
ダンジョンマスターとしては、ありがたい展開だった。




