騎士団の鉢合わせ
「アレン、いつもの軍隊来たよ」
「ほんとだな」
アレンはダンジョンの入口を映す魔道具を覗き込んだ。
いつもの騎士団が、まとまってダンジョンへ入っていく。
以前から何度も来ているため、動きにも慣れが見える。
先頭が進み、後ろの騎士たちが続く。
「今回は中で鉢合わせるだろうから、見ていよう」
アレンは魔道具を操作しながら、騎士団の動きを追いかけた。
いつもの騎士団がダンジョンへ入っていく。
新人とベテランに分かれて進み、十階層まで到着すると、隊長が全員を集めた。
「新人はここでガチャを回して食料を確保しろ」
「了解!」
新人たちはさっそくガチャの前へ向かっていく。
十一階層へ向かうベテランたちとは、ここで行動を分ける。
「ベテランは俺と一緒に十一階層へ行くぞ」
「分かりました」
新人たちを十階層に残し、隊長とベテランの騎士たちは十一階層へ向かった。
階段を下り、十一階層へ到着する。
いつものように周囲を確認しながら進んでいく。
しばらく進んだところで、前方から戦闘音が聞こえてきた。
「誰か戦っているな」
「冒険者でしょうか?」
「分からん。警戒して進め」
騎士たちは武器を構えながら慎重に進んでいく。
そして、戦闘音のする場所が見えてきた。
そこにいたのは冒険者ではなかった。
騎士たちだった。
しかも、自分たちとは明らかに違う装備を身につけている。
「隊長、隣の騎士団が来ています」
「そうか」
隊長は周囲を見回した。
人数も多い。
さらに、騎士たちの後ろには大量の荷物が見える。
「声をかけろ。事情を聞け」
「了解です」
騎士が隣領の部隊へ近づいていく。
しばらくすると戻ってきた。
「隣領の騎士団長が奥にいるので、隊長と話をしてほしいとのことです」
「奥に行くか」
隊長はベテランの騎士たちを連れて、十一階層の奥へ進んだ。
進んでいくと、いくつもの荷物が置かれている場所が見えてきた。
食料、水、野営道具。
まるでここで長期間活動するつもりで来ているような量だった。
「ずいぶん持ってきてるな」
隊長が思わず呟く。
やがて、一人の騎士団長が姿を現す。
「やっぱり来たか」
「どうしてお前がいるんだ?」
「お前たちと同じ理由だ」
「なるほど」
隊長は苦笑する。
「うちの領主とお前のところの領主はライバル関係だからな。負けたくないんだろう」
「ああ。おそらくそっちも同じだろう」
「それにしても、お前たちはずいぶん身軽だな」
隣領の騎士団長が、こちらの荷物を眺める。
こちらは必要最低限の荷物しか持っていない。
「必要な物はダンジョンで調達するからな」
「なるほど」
隣領の騎士団長は納得したように頷く。
「そっちは随分と荷物が多いな」
「ああ。長期間ここで活動するつもりだからな」
「そこまでやるのか?」
「こちらは全て用意してきた。化粧品以外は目もくれない」
「本気度が違うな」
隣領の騎士団長は苦笑する。
「そちらも十分本気だと思うが?」
「まあな」
二人はしばらく顔を見合わせる。
どちらも、自分たちが何のためにここへ来たのか分かっている。
同じ目的で来ている以上、同じ場所を取り合えば面倒なことになる。
「このまま同じ場所で活動すると面倒だな」
「そうだな」
隊長は十一階層を見回した。
広いとはいえ、騎士団が二つとも自由に動けば、探索中にぶつかる可能性もある。
「戦場を西と東に分けよう」
「分かった」
隣領の騎士団長もすぐに了承した。
「こちらは東を使う」
「なら、こっちは西だな」
「それでいい」
互いに活動範囲を決めると、隣領の騎士団長がふとこちらの後ろにいる人物へ目を向けた。
「ところで、そいつはなんだ?」
「文官だ」
「文官?」
「ああ」
隣領の騎士団長は少し驚いた顔をする。
「文官まで連れてくるなんて、どんだけ力を入れてるんだ?」
「それだけ負けたくないんだろうな」
文官は二人の騎士団長を見ながら、黙って記録用の道具を抱えていた。
今回の活動で得られるものを記録し、どれだけの人数が必要なのか、どれくらい滞在すればいいのか。
それを調べるために同行している。
「まあ、お互い目的は同じだ」
「そうだな」
「なら、邪魔をしないようにやろう」
「ああ」
二つの騎士団は十一階層を東西に分け、それぞれの探索を始めた。
東へ向かう騎士団。
西へ向かう騎士団。
どちらも自分たちの目的のために、十一階層の探索を続けていく。
その様子を見ていたアレンは、魔道具の映像から目を離せなかった。
「本当に軍隊同士で場所を分けて活動してるよ」
「十一階層、大人気だね」
「まさか、こんなことになるとはな」
アレンは二つの騎士団を映した魔道具を眺める。
以前は、十一階層に来る冒険者が増えればいいと思っていただけだった。
それが今では、領主同士が張り合い、騎士団まで送り込んでくるようになっている。
「化粧品一つで、まさかここまでになるとはな」
アレンは苦笑した。
「ダンジョンマスターとしては、ありがたいけど」
十一階層には、今日も大勢の人間が滞在している。
アレンにとっては、それだけで十分ありがたいことだった。




