リリアのデート報告
セレスティアとフローラとリリアとクラリスの四人は、お茶会をしていた。
四人が集まること自体は、もはや珍しいことではなかった。
セレスティアにとってフローラは、王妃教育を共に受けてきた後輩のような存在。
クラリスは隣国の姫でありながら、セレスティアを姉のように慕っている。
そしてリリアは、国内最大の武力を持つ辺境伯令嬢でありながら、セレスティアに強い憧れを抱いている。
そんな四人が集まれば、自然と話題は多くなる。
「セレスティア様、アレン様はとてもいい方ですね」
リリアが紅茶を飲みながら、嬉しそうに話す。
「初めてデートをしましたけど、とても楽しい時間を過ごせましたわ」
「それは何よりね」
セレスティアは満足そうに微笑んだ。
「私はあなたがアレンと親しくしてくれると嬉しいわ」
「はい。私もまた一緒にお出かけしたいと思っています」
リリアが答える。
すると、隣で話を聞いていたフローラが笑顔になった。
「お姉さまの台本は最高です」
「でしょう?」
セレスティアは当然のように答えた。
「最初は手を繋ぐところから始まって、武器屋、防具屋、魔道具屋、レストラン、道具屋……」
リリアが思い返す。
「今考えると、かなり大胆なデートでしたわね」
「あなたが楽しめたのなら、それでいいのよ」
「はい。普段、自分で武器や防具を選ぶことはあっても、あれほど自由に買っていただくことはありませんから」
「アレンはああいうことを気にしないのよ」
セレスティアが言う。
「好きな物を買ってあげる、と書いておけば、本人もその通りにするでしょう?」
「本当にその通りでしたわ」
リリアは思わず笑った。
「何を選んでも、本当に買ってくださるんですもの」
「アレンさんらしいですね」
フローラも微笑む。
クラリスも楽しそうに話を聞いていた。
「お姉さまの台本は、相変わらず凄いですね」
「台本通りに動かせば、ある程度はうまくいくものよ」
「ある程度、ですか?」
「ええ」
セレスティアは紅茶を飲む。
「人間関係は、予定通りにはいかないものだから」
その言葉に、三人は少しだけ納得した。
セレスティアは人をよく見ている。
誰が何を好むのか。
誰と誰を組み合わせればうまくいくのか。
どうすれば相手が自然に楽しめるのか。
そのあたりを考えることに関しては、セレスティアはかなり優秀だった。
そんな会話をしていると、フローラがふと思い出したようにリリアを見る。
「そういえば、リリア様」
「はい?」
「台本の注意書きは守りましたの?」
「注意書きですか?」
リリアが首を傾げる。
「ええ。最後のほうに書いてあったでしょう?」
フローラは少しだけ言いにくそうにする。
「トイレは適切に処理する、という注意書きです」
「ああ、それですか」
リリアは少し考えた。
「意味がわかりませんでしたわ」
「…………」
セレスティアが黙った。
「…………………」
フローラも黙った。
二人の間に、妙な沈黙が流れる。
クラリスとリリアは、何が起きたのか分からない。
クラリスが不思議そうに二人を見る。
「どうしたのですか?」
「いえ」
セレスティアが何事もなかったように紅茶を飲む。
「王妃教育の内容ですからね」
「王妃教育?」
リリアが首を傾げる。
「ええ」
「そういうものなのですか」
「そういうものです」
セレスティアはきっぱりと言った。
フローラもそれ以上は何も言わなかった。
リリアは納得したように頷く。
「なるほど。王妃教育というのは奥が深いのですね」
「そうなのです」
フローラが微妙な笑顔で答えた。
クラリスだけは、いまひとつ納得できていないようだった。
しかし、セレスティアが話を終わらせたので、それ以上追及することはなかった。
「ところで」
セレスティアが話題を変える。
「今度また一緒にダンジョンランドでも行きますか?」
「いいわね。みんなで行きましょう」
フローラがすぐに賛成する。
「せっかくなら、貸し切りでプールに行きましょう」
クラリスも楽しそうに頷いた。
「プールですか」
リリアも興味を示す。
「ええ。私たちしかいないなら、少しぐらいサービスして機嫌をとりましょう」
「お姉さま?」
フローラがセレスティアを見る。
「水着は私が用意しておくわ」
「お姉さま?」
今度はクラリスも声を上げた。
セレスティアは二人の反応を気にする様子もない。
「私に任せたら何もかもうまくいくわ」
「……」
フローラとクラリスは顔を見合わせた。
セレスティアがこう言ったとき、本当に何とかしてしまうことを二人とも知っている。
リリアはそんな二人の反応を見ながら、楽しそうに笑っていた。
「楽しみです」
セレスティアはリリアを見る。
「今度はリリアも参加よ」
「はい。ぜひ参加させてください」
リリアは嬉しそうに答えた。
そして、少しだけ誇らしげに続ける。
「セレスティア様に誘われて断る令嬢なんていませんわ」
「そうでしょう?」
セレスティアは満足そうに微笑む。
「楽しみだわ」
こうして次のお茶会の予定は、四人でのダンジョンランドのプールへと決まった。
ただし、その日のうちにセレスティアが水着まで用意すると言い出したことで、フローラとクラリスは少しだけ不安を覚えていた。
それでもリリアは、何も知らずに楽しそうに紅茶を飲んでいた。




