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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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聖剣の購入

リリアは騎士団とともに町を歩いていた。


以前と比べると、周囲の雰囲気がかなり変わっている。


騎士団の中には、以前まで勇者候補としてダンジョンに挑んでいた者たちの姿もあった。


彼らはもう勇者候補ではない。


37階層で長く足踏みしていた彼らは、リリアに拾われたことで本来の力を発揮し始めた。


そして、勇者候補という立場を自ら辞退した。


その後、全員が冒険者登録を行った。


結果は――全員Aランク。


「まさか、全員Aランクになるとは思わなかったわね」


リリアがそう言うと、隣を歩いていた元勇者候補が苦笑する。


「私たち自身も驚いています」


「37階層であれだけ苦戦していたのに?」


「相性が悪かっただけだったのでしょうね」


彼らはその後、40階層を突破した。


さらに上の階層にも挑み続け、今ではこのダンジョンに常駐しているSランクパーティーよりも強い存在になっていた。


特に、リリアが拾った元勇者候補は別格だった。


最初は騎士団長と同等か、それ以上ではないかと思われていた。


だが、実際に戦力を見れば、そんな評価では足りなかった。


明らかに騎士団長より上。


現在では騎士団の顧問として、騎士たちの訓練や戦術について助言する立場にまでなっている。


本人としては、そこまで出世したつもりはない。


ただ、リリアに拾われた。


それだけだった。


「お嬢様」


「何かしら?」


元勇者候補が、少し先にある建物を指差した。


「聖剣を見に行ってみませんか?」


「聖剣?」


リリアが首を傾げる。


「この町に聖剣があるの?」


「はい。聖剣があるので、この町に勇者候補が集まって来たんですよ」


「なるほど」


リリアは少し考える。


このダンジョンには、上を目指す冒険者が大勢集まっている。


そこに聖剣まで存在しているとなれば、勇者候補たちが集まるのも当然だった。


「いいわね。私も見たいわ」


二人は聖剣が展示されている場所へ向かった。


そこには、厳重に管理された一本の剣が置かれていた。


派手な装飾があるわけではない。


それでも、ただそこに置かれているだけで、周囲の空気が違って感じられる。


リリアはしばらく黙って聖剣を見つめた。


「これが聖剣か……」


「はい」


「神々しいわね」


近づいて見ると、剣から微かな魔力の波動が伝わってくる。


「魔力の波動を感じる」


リリアは思わず感心した。


「凄いわね」


そして、聖剣の横にある説明へ目を向ける。


そこには交換に必要な条件と、価格が書かれていた。


「三十億……」


思わず金額を口にする。


さすがのリリアも、その金額には少し驚いた。


だが、隣にいる彼は別の部分を見ていた。


「お嬢様、交換条件があります」


「Aランク冒険者以上ね」


リリアも気づいた。


聖剣は誰にでも渡されるわけではない。


三十億という金額を支払えるだけでは足りない。


Aランク冒険者以上。


つまり、実力がなければ交換することすらできない。


リリアは隣にいる彼を見る。


「……そういえば」


「はい?」


「あなたたち、勇者候補を辞退して冒険者になったのよね」


「はい」


「そしてAランクになった」


「そうですね」


リリアはもう一度、聖剣を見る。


三十億。


Aランク冒険者以上。


そして、自分の隣にいる男。


条件が揃っている。


「三十億でAランク冒険者以上……」


リリアは少し考えると、笑った。


「私が買って、あなたに与えれば、更に先に行けるわね」


「お嬢様?」


彼は思わず聞き返した。


リリアは聖剣から目を離さない。


「勇者候補だったあなたが、勇者候補を辞退して冒険者になった」


「はい」


「それでAランクになった」


「はい」


「なら、その先を目指せばいいじゃない」


彼にはリリアが何を言っているのか分からなかった。


「ですが、三十億ですよ?」


「だから?」


「簡単に出せる金額ではありません」


「そうね」


リリアはあっさり答えた。


そして聖剣を見る。


「あの剣は、あなたのためにあそこで私が来るのを待ってたのよ」


「お嬢様?」


「きっとそういうことなのよ」


あまりにもリリアらしい言い方だった。


彼は苦笑する。


「いけません」


「どうして?」


「お嬢様に、そこまでしていただく理由がありません」


「あるわよ」


リリアは彼を見る。


「あなたを拾ったのは私ですもの」


彼は黙った。


37階層で燻っていた頃。


勇者候補として期待されながら、結果を出せなかった頃。


その自分を見つけて、手を差し伸べてくれたのがリリアだった。


勇者候補を辞退することになったのも、冒険者として再出発することになったのも、すべて今につながっている。


そして今、自分はAランク冒険者になっている。


聖剣を手にする資格まで得ていた。


リリアは聖剣を指差す。


「あなたに与えます」


「……」


「恩を返しなさい」


その言葉に、彼はしばらく何も言えなかった。


やがて深く頭を下げる。


「お嬢様」


「何?」


「一生つかえます」


リリアは満足そうに笑った。


「それでいいのよ」


こうして聖剣はリリアに買われ、元勇者候補に与えられた。


アレンはパチンコ屋に装備を飾るのをやめた。

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