リリアの快進撃
アレンはマスタールームで、セレスティアと一緒にダンジョンの様子を見ていた。
モニターに映っているのは、50階層へ向かって進んでいる一団だった。
「なあ、あの娘は貴族だよな?」
「ええ、そうですわね」
「冒険者じゃないよな?」
「そのはずですわ」
アレンはもう一度モニターを見る。
そこに映っているのは、リリア率いる騎士団だった。
「そのはずなんだけど、なぜかリリア率いる騎士団は50階層に到達していたぞ」
「そうですわね」
「……あれ、本当に騎士団か?」
「そのはずですわ」
二人とも、しばらく黙ってモニターを見つめる。
「貴族の令嬢って、戦えないといけない世界に変わったのか?」
「私は戦わないわよ」
セレスティアは即答した。
「ですよね」
「私は戦闘よりも、商会や貴族との交渉のほうが得意ですもの」
「じゃあ、あの騎士団がおかしいんだな」
「騎士団がいていい階層ではありませんわね」
50階層。
これまでにも数多くの冒険者が挑み、簡単には突破できなかった階層だ。
そこを騎士団が進んでいる。
しかも、リリアが率いている。
「そういえば、リリアのところに騎士団長クラスの人材が複数入ったって言ってたわね」
「ああ」
アレンはモニターから目を離さない。
「騎士団長って、複数いていい存在じゃないぞ」
「まあ、そこは気にしなくてもいいのでは?」
「いや、気になるだろ」
そんな会話をしている間にも、騎士団は50階層の攻略を進めていた。
「挑むみたいよ」
「まじか」
50階層の魔物が姿を現す。
これまでなら、ここから苦戦するのが普通だった。
しかし――。
「……なんか押してないか?」
「押していますわね」
「勝てそうね」
セレスティアの言葉通りだった。
以前のリリアの戦闘は、本人の能力に頼る場面が多かった。
しかし今は違う。
前衛が敵の動きを止める。
後衛がその隙を狙う。
一人が攻撃すれば、別の一人が次の攻撃につなげる。
誰かが危なくなれば、すぐに別の者がフォローに入る。
「なんだこれ」
アレンは思わず身を乗り出した。
「今までのリリアに頼った戦闘じゃなくなってるぞ」
「ええ。連携が見違えるほど良くなっていますわ」
「別の騎士団みたいだな」
「騎士団長クラスの人材が複数入った効果でしょうね」
戦力そのものが増えただけではない。
強い人間が複数いることで、それぞれの動きを理解し、組み合わせることができるようになっている。
結果として、一人一人の強さ以上の力を発揮していた。
「彼女のところ、国軍より強いかもしれないって言われてるわ」
「それ、大丈夫なのかよ」
アレンが心配そうに言う。
「リリアは私の妹分ですのよ」
「そこは押さえてるのか」
「もちろんですわ」
セレスティアは当然のように答えた。
そんな会話をしている間にも、戦闘は続いていた。
そして――。
「勝ったわよ」
「……勝ったな」
50階層の魔物が倒れる。
騎士団はそのまま先へ進むことなく、戦闘後の確認を始めている。
「どこを目指してるんだ、あいつ」
「さあ?」
セレスティアも少し楽しそうにモニターを眺めている。
「今度は『領地に一番Aランク冒険者が多い』とか自慢しそうね」
「冒険者じゃなくて騎士だろ」
アレンのツッコミがマスタールームに響いた。




