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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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フローラと町デート

アレンは台本を片手にフローラを待っていた。


今回もセレスティアから頼まれた仕事だった。


フローラの国での立場を考えたら、もっと良好な関係を築きなさい。


セレスティアからは、そう言われていた。


「……」


アレンは手元の台本を見る。


「すまん、フローラ。こんなことにつきあわせて」


「私は構いませんよ」


「でも、セレスティアに言われたからやってるだけだからな」


「お姉さまが意味のないことをするわけがありません」


フローラは迷いなく答えた。


「……そうなのか?」


「ええ」


「じゃあ、この台本にも意味があるのか?」


「きっとありますわ」


アレンは台本を開いた。


最初のページには、今回も簡潔な指示が書かれていた。


『移動中は手をつなぐ』


「またかよ」


アレンは思わず声を上げた。


「なんで毎回これなんだよ……」


フローラは台本を覗き込む。


「……」


そして、唖然とした顔になった。


「どうした?」


「いえ……」


「何か変なことでも書いてあるのか?」


「……アレンさんは、そのままでいいと思います」


「?」


アレンはよく分からないまま、次のページをめくった。


そこには注意書きがあった。


『トイレに行きたくなったら適切に処理すること』


「……」


アレンは首を傾げる。


「意味が分からない」


フローラは唖然としていた。


「……本当に分からないんですか?」


「分からない」


「……そうですか」


どうやらフローラには分かるらしい。


しかし、アレンには何のことなのかさっぱり分からなかった。


「まあいいか。行くぞ」


「はい」


二人は町へ向かって歩き始めた。


アレンは台本の指示通り、フローラと手をつないだ。


「……」


「……」


しばらく歩く。


以前よりは、フローラが嫌がっていないように感じる。


「前よりは嫌がられてない気がするな」


「……そうですね」


フローラは少しだけ笑った。


二人はそのまま町を歩いていく。


最初に向かったのはカフェだった。


席に座り、軽食を注文する。


料理が運ばれてくると、二人は食事をしながら話を始めた。


町のことから商店のことへ。


そして、自然と経済の話になった。


「最近、この辺りの店も客が増えたよな」


「ダンジョンに来る冒険者が増えていますからね」


「魔法石の流通も――」


アレンが話している途中で、フローラが続ける。


「その場合は流通量だけではなく、価格の変動も考える必要がありますわね」


「……」


アレンはフローラを見る。


そこからさらに話を続けてみると、フローラのほうが詳しい部分まである。


「お前、結構詳しいな」


「王妃教育で学びましたから」


「そういえば、お前も王妃候補なんだよな」


「はい」


アレンは改めてフローラを見る。


今まではセレスティアと一緒にいる侯爵令嬢、くらいにしか考えていなかった。


だが、こうして経済について話していると、彼女が王妃候補として教育を受けてきたことがよく分かる。


「……初めて実感した」


「何をです?」


「フローラも王妃候補なんだって」


「今まで何だと思っていたんですか?」


「セレスティアの妹分」


「……」


フローラは何とも言えない顔をした。


「少しは認識を改めてくださいね」


「分かった」


カフェを出て、次の目的地へ向かう。


しばらく歩いたところで、フローラが立ち止まった。


「どうした?」


「すみません。少し疲れたので休ませてください」


「大丈夫か?」


「はい。少し休めば大丈夫です」


アレンはフローラを見る。


そして、自分が少し歩かせすぎたのだと気づいた。


普段からダンジョンを歩き回っているアレンにとっては何でもない距離だったが、さすがに令嬢には長かったのかもしれない。


「悪かったな。歩かせすぎたか」


「いえ、楽しかったので」


「それでも無理するなよ」


二人はしばらく休んだ。


やがてフローラが立ち上がる。


「もう落ち着きました」


「そうか。じゃあ次の場所に行くか」


「はい」


再び二人で歩き始める。


アレンはふと、道の端を見る。


「あそこの地面、濡れてたかな?」


「……」


フローラが何とも言えない顔をする。


「どうした?」


「いえ、何でもありませんわ」


「そうか?」


アレンにはよく分からなかった。


そして最後に二人が訪れたのは宝石店だった。


店内には様々な宝石が並んでいる。


アレンは台本を見る。


そこには、宝石をプレゼントするように書かれていた。


「これ、フローラに」


「私に?」


「今日の記念だ」


フローラは驚いたように宝石を見る。


そして、嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます」


「気に入ったか?」


「はい。とても嬉しいです」


「そうか」


アレンはほっとした。


これでセレスティアから言われたミッションは達成しただろう。


フローラとの関係も、以前より良くなった気がする。


「これでセレスティアのミッションは達成かな」


アレンは満足そうに頷いた。


帰り道、アレンはフローラを見た。


そして、ふと思い出す。


「フローラ」


「はい?」


「一度もトイレに行ってないのはすごいな」


「……」


フローラは唖然とした。


アレンは本気で感心している。


「一日歩き回ったのに、一度も行ってないんだな」


「……アレンさん」


「なんだ?」


「もう、その話はしないでください」


「?」


フローラには最後まで、アレンが何を言っているのか理解していないことだけは分かった。


アレンは首を傾げながら、フローラと一緒に帰っていった。

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