セレスティアの個人資産
「ねえ、アレン」
「なんだ?」
「聖剣って強いの?」
「めっちゃ強いぞ」
「どのくらい?」
セレスティアが興味津々で聞いてくる。
アレンは少し考えた。
「お前でも一撃で三十階層のボスを倒せるぐらい」
「……それは凄いですわね」
「でしょう?」
セレスティアの目が輝いた。
「聖剣を借りて、Cランク冒険者になってこようかしら」
「その前にゴブリンにやられる落ちが待ってるぞ」
「失礼ね。私だって少しくらい戦えますわ」
「聖剣が強いだけで本人が強くなるわけじゃないからな」
「……」
セレスティアは少し考え込んだ。
「ねえ、聖剣は見られないかしら?」
「見られるぞ」
「本当?」
「ああ。パチンコ屋に景品として置いてある」
「……パチンコ屋?」
「そう」
「行きましょう」
「今から?」
「今からですわ」
セレスティアは即決だった。
結局、アレンたちはダンジョンランドのパチンコ屋へ向かった。
店内に入ると、景品カウンターの奥に、ひときわ厳重な展示ケースが置かれていた。
その中に一本の剣が収められている。
聖剣だった。
周囲には普通の景品も並んでいる。
お菓子。
日用品。
家電。
そして、その中に場違いなほど高級な聖剣。
「これが聖剣ですの?」
「そう」
セレスティアは展示ケースの前まで歩いていく。
フローラとクラリスも後ろから覗き込んだ。
「凄い……」
「本物なんですか?」
「本物だぞ」
ケースには値札が付いていた。
三十億。
「……三十億」
セレスティアが値札を見つめる。
「交換できるの?」
「いや、できない」
「どうして?」
「飾ってあるだけだからな」
「景品なのに?」
「景品っぽく置いてあるだけだ」
アレンは平然と答えた。
「そもそも三十億だぞ。誰が交換するんだよ」
「私なら交換できますわよ」
「……え?」
「私の個人資産でも買えるんですけど」
アレンが固まった。
「お前、そんなに金持ちなのかよ」
「たぶんフローラも買えるし、クラリスも買えるわよ」
「え?」
フローラとクラリスも頷いた。
「私も買えると思います」
「私も……たぶん」
「………………」
アレンは聖剣を見る。
三十億。
そしてセレスティアたちを見る。
「これ、普通に交換できるようにしてたら、貴族が買って終わってたな」
「そうなりますわね」
「冒険者が聖剣を手に入れるための景品にしたつもりだったんだけどな」
アレンは少し考えた。
「よし」
「何をするんですの?」
「交換条件を追加する」
アレンはダンジョンコアに指示を出した。
「聖剣を交換する場合は、Aランク冒険者以上の実力を有すること」
「それが賢明ね」
セレスティアも納得した。
「これなら金だけ持っている貴族には交換できない」
「そういうこと」
アレンはもう一度、展示ケースの中の聖剣を見る。
「危なかったな」
「何がですの?」
「冒険者が欲しがるぐらいしか思ってなかった」
「……」
「普通に考えたら、金持ちの貴族が買って家に飾るよな」
セレスティアが聖剣を見る。
「私なら屋敷の一番目立つところに飾りますわね」
「やっぱりそうなるのかよ」
「三十億ですもの」
「そこじゃないんだよなぁ……」
アレンは頭を抱えた。
聖剣は冒険者のために用意した。
だが、金持ちにとってはただの超高級インテリアにもなる。
「危なかった……」
展示ケースの中では、三十億の聖剣が何事もなかったかのように輝いていた。




