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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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国一番の噂

セレスティアはフローラとクラリスとお茶会をしていた。


優雅な午後のひととき。


紅茶の香りが漂い、三人は楽しそうに会話をしている。


ただし――


なぜかアレンは執事服を着て、三人の給仕をしていた。


「アレン、おかわりをお願いしますわ」


「はいはい」


「私もお願いします」


「フローラもか」


「お願いします」


「……なんで俺が」


「執事ですから」


「いつから俺は執事になったんだよ」


「今ですわ」


「理不尽すぎる」


そんなやり取りをしていると、フローラが嬉しそうに話し始めた。


「お姉さま、聞いてくださいませ」


「何かしら?」


「リリア様が、ついに領地のBランク冒険者の数が王都を抜いて、国内一になったと自慢していましたわ」


「まあ」


セレスティアは楽しそうに笑った。


「辺境伯領だから他国と接していることを考えれば、抑止力としては最高の謳い文句ね」


「でしょう?」


「実態は、騎士団のメンバーがBランク冒険者の資格を取っただけなのだけれど」


「それは言わないほうがいいと思いますわ」


「当然ですわ。外向きには立派なBランク冒険者集団ですもの」


フローラが首を傾げる。


「でも、Bランクってかなり強いんですよね?」


「そうですわ」


セレスティアは紅茶を飲みながら答える。


「Bランクにもなると上級冒険者ですもの」


そして、少しだけ意地の悪い笑みを浮かべた。


「ただし、リリアのところのBランク冒険者は張りぼてですわ」


「張りぼて?」


「ええ」


セレスティアはアレンを見る。


「アレンと一緒に戦闘を見ていましたけれど、あの方たちは基本的にリリアを守って、リリアの魔法で敵を倒すだけですもの」


「まあ、役割分担としては普通じゃないか?」


「普通の戦闘ならそれでもいいわ」


セレスティアは指を一本立てる。


「でも、想定外のことが起きたときに何もできないのよ」


「……」


「敵が予定と違う動きをしたらどうするのか。リリアが魔法を使えない状況になったらどうするのか。隊列が崩れたらどうするのか」


「臨機応変さがない、と」


「そういうことですわ」


クラリスが感心したようにセレスティアを見る。


「お姉さま、冒険者のことにずいぶん詳しくなりましたわね」


「お前、冒険者のこと詳しくなったな」


アレンも同じことを言った。


セレスティアは少し得意そうな顔をする。


「あれだけ冒険者を見ていたら分かりますわよ」


「最初は冒険者のランクなんて興味なかっただろ」


「ダンジョンのことを考えたら必要な知識ですもの」


「なるほどな」


クラリスも二人の会話を聞きながら頷いた。


「私もこちらに来て、冒険者というものが国にどれだけ貢献しているのか、少しずつ見えてきました」


「それは良いことね」


セレスティアはクラリスを見る。


「外の世界に目を向けることは大切よ。自分の国に持ち帰りなさい」


「はい」


クラリスは素直に頷いた。


「冒険者制度も、ダンジョンの利用方法も、領地経営も……勉強になることばかりです」


「その意気よ」


「ただ……」


クラリスが少し困ったような顔をする。


「私、国に帰れるのでしょうか」


「帰れるでしょう?」


「帰れませんわ」


「なぜ?」


クラリスは少し考えてから答えた。


「……あの屋敷を知ったら、もう戻れません」


「…………」


セレスティアが固まった。


フローラも黙る。


アレンだけが無言で紅茶を注いでいる。


「お姉さまの屋敷には、いつでも温かいお湯がありますし」


「ええ」


「美味しい料理が出てきますし」


「そうね」


「冷たい飲み物もありますし」


「ええ」


「映画も見られますし、遊園地もありますし、移動も便利ですし……」


クラリスは遠い目をした。


「自国に戻ったら、全部なくなるのですよね」


「……」


セレスティアはアレンを見る。


アレンもセレスティアを見る。


「……やりすぎだったかしら?」


「今さら気づいたのか?」


「だって、これほどとは思わなかったのですもの」


「だから言っただろ」


アレンはティーポットを置いた。


「便利な生活を一度覚えたら、元には戻りにくいって」


クラリスは静かに紅茶を飲んだ。


「……お姉さま」


「何かしら?」


「もう少しだけ、こちらで勉強していてもよろしいでしょうか?」


「もちろんよ」


セレスティアは笑顔で答えた。


その横で、アレンは思った。


――また一人、帰れなくなったな。

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