ゴミの格言
アレンはマスタールームでダンジョンを見回っていた。
モニターを眺めながら各階層の様子を確認していると、隣にいたセレスティアが口を開いた。
「そういえば、以前お願いした車はどうなっているのかしら?」
「お前もダンジョンを運用してるんだから、ポイントを貯めて自分で買えよ」
「全然貯まらないのよ」
セレスティアは不満そうに答えた。
「車を買うのに数年かかるわ」
「俺がダンジョンマスターになった時より、かなり条件いいぞ。そのダンジョン」
「そうなの?」
「俺が最初に持ってたダンジョンなんて、もっと悲惨だったからな」
アレンが淡々と言う。
セレスティアは少し考えると、何かを思いついたように顔を上げた。
「騎士団の投入を増やそうかしら」
「お前はそれができるから強いな」
アレンは感心した。
「俺は冒険者を増やすのに苦労したんだぞ」
「手っ取り早く増やせないかしら」
「騎士団に自決してもらったら早いぞ」
「却下ね」
即答だった。
「冗談だ」
「笑えない冗談ですわ」
セレスティアは呆れたようにアレンを見る。
それから、改めてマスタールームのモニターへ視線を向けた。
「でも、本当に不思議ね。あなたのダンジョンは、どうしてこんなにもポイントが入っているの?」
「ダンジョンにいる人数と、ダンジョンで戦ってる人数。それと、ダンジョンの外から持ち込まれる魔石かな」
「魔石じゃないといけないの?」
「なんでもいいぞ」
「なんでも?」
「ダンジョンに吸収させればポイントになる」
セレスティアの目が細くなった。
「……なんでも?」
「極論を言えばな」
「では、ゴミでも?」
「まあ、そういうことになるな」
しばらく沈黙が流れた。
セレスティアは何かを考えている。
「あなたの町は、どうして維持できますの?」
「簡単だ。第一階層とセーフティーゾーンだけ、ダンジョンが吸収しないように設定してるから」
「なるほど……」
セレスティアは納得したように頷いた。
「つまり、ダンジョンが吸収するのはゴミでもいいのね」
「極論はな」
「王国には、『ダンジョンにゴミを捨てるな』という格言があるのよ」
「……」
アレンは少し考えた。
「それ、もしかして……」
「何か思い当たることでも?」
「昔からゴミをダンジョンに捨ててたんじゃないか?」
「ありそうね」
「で、それがダンジョンポイントになって……」
アレンはモニターを見る。
「そのポイントでモンスターを増やして……」
セレスティアも同じ方向を見る。
「そして、スタンピードになった……」
二人の間に沈黙が落ちた。
「……」
「……」
セレスティアが静かに口を開いた。
「また国家の謎が一つ解明されてしまいましたわ」
「たぶん違うと思いたいんだけどな」
「でも、筋は通っていますわよ」
「それが一番怖いんだよ」




