プールの開設
アレンは新しい施設について考えていた。
「混浴文化を普及させよう」
ふと思いついた。
ダンジョンランドには温泉もある。
ならば、男女が一緒に入る混浴文化を広めてもいいのではないか。
さっそくアレンはセレスティアに相談した。
「混浴?」
「そうだ」
「あり得ませんわ」
即答だった。
「そんなにか?」
「そんなにですわ」
どうやら、この世界では混浴というものは受け入れられそうにない。
「じゃあ、水着を着てならどうだ?」
「水着……ですの?」
「それなら肌の露出も抑えられるだろ」
セレスティアは少し考えた。
「露出の少ない水着であれば、可能かもしれませんわ」
「よし」
アレンはすぐに決めた。
「じゃあ、プールを作ろう」
「話が早すぎませんこと?」
こうして、ダンジョンランドにプールが作られることになった。
プールにはウォータースライダーも設置した。
さらに、ピーチバレーができる場所も用意した。
完成したプールを見て、アレンは満足そうに頷く。
「これで混浴文化が広まるな」
「広まりませんわ」
セレスティアはまたしても即答した。
「水着を着ているんだからいいだろ」
「貴族が男女一緒に利用することはありませんわ」
ダンジョンランドでは、もともと貴族が利用する日と平民が利用する日を分けている。
そして貴族の日であっても、男女が一緒にプールを利用するわけではない。
アレンが考えていた混浴文化とは、かなり違うものだった。
「じゃあ、俺たちが利用するときは?」
「その場合は貸し切りにしてくださいませ」
「分かった」
セレスティアとの約束で、セレスティアたちが利用するときだけプールは貸し切りになることになった。
そして、いよいよプールが営業を開始した。
最初はセレスティアの呼び掛けで、フローラとクラリス、そして王妃がやって来た。
「本当にプールを作ってしまったのですね」
王妃がプールを見ながら言う。
「作ると言ったからな」
全員が露出の少ない水着に着替える。
アレンは王妃の姿を見て、思わず感想を漏らした。
「王妃様の水着姿は尊い」
「アレン?」
「何でもない」
セレスティアに睨まれ、アレンは視線を逸らした。
「では、遊びましょうか」
セレスティアの呼び掛けで、みんながプールへ向かう。
最初は泳いでいただけだったが、すぐに遊びが始まった。
ピーチバレーでは、予想以上に白熱した。
「セレスティア、そっちです!」
「任せなさい!」
クラリスが声を上げ、フローラも楽しそうにボールを追いかける。
王妃もいつの間にか夢中になっていた。
次はウォータースライダー。
「これは面白そうですね」
王妃が興味を示す。
「行きましょう!」
セレスティアも楽しそうだ。
次々とウォータースライダーを滑り、戻ってきたみんなは笑顔になっていた。
アレンはその様子を眺める。
みんな楽しそうだ。
これはこれで成功だった。
そして、セレスティアたちが帰った後、プールは通常営業に戻った。
平民の日。
「うわー!」
「すごい!」
大勢の平民がやって来た。
子供たちはウォータースライダーに夢中になり、大人たちは泳いだり、ピーチバレーを楽しんだりしている。
プールは予想以上の大盛況だった。
「大人気だな」
アレンは満足そうに眺めていた。
ところが――。
貴族の日。
「……誰もいないな」
プールには誰一人としていなかった。
完全な無人だった。
「貴族は来ないのか?」
アレンが尋ねる。
「来ませんわね」
セレスティアが答えた。
「なぜだ?」
「わざわざ人目のある場所で水着になる貴族が、どれほどいると思います?」
「……なるほど」
アレンは納得した。
貴族の日を作ったものの、セレスティアたち以外には利用者がいない。
そしてセレスティアたちが利用するときは、貸し切りだ。
結果として、貴族の日は誰もいない。
一方で、平民の日は大盛況。
「せっかく貴族の日まで作ったのに」
「仕方ありませんわ」
「まあ、平民に人気ならいいか」
アレンはあっさり納得した。
当初の目的だった混浴文化の普及は、見事に失敗した。
しかし、ダンジョンランドにはまた一つ人気施設が増えた。
アレンはプールを眺めながら、次のことを考える。
「次は温泉で混浴だな」
セレスティアが振り返った。
「……水着を着て、ですわよね?」
「もちろん」
「それなら……まあ、いいでしょう」
こうしてアレンは、次なる計画として、水着着用の混浴温泉を考え始めた。




