セレスティアとのデート
アレンは三度、ダンジョンランドの入り口で待ち合わせをしていた。
今日の相手は――セレスティアだった。
「何でお前とデートなんだよ」
開口一番、アレンはそう言った。
セレスティアは当然のように台本を手にしている。
「台本を作った責任があるからよ」
「だったらクラリスとデートする前に、自分で経験しろよ」
「そういうことよ」
「……は?」
「次の台本を作るために、自分で経験する必要があるのよ」
セレスティアは当然のように答えた。
「まだやるのかよ……」
クラリスとのデート。
フローラとのデート。
そして今回はセレスティア。
アレンとしては、もう十分だった。
しかしセレスティアはやる気満々だった。
「まずは手をつないで」
「お前、楽しそうだな」
「楽しいわよ」
セレスティアは笑いながら手を差し出した。
アレンは仕方なく、その手を取る。
「……お前と手を繋いでもドキドキしないんだが」
「私もよ」
「おい」
「何よ?」
「そこは少しくらい取り繕えよ」
「事実でしょう?」
「まあ、そうだけど」
セレスティアは台本を開いた。
「台本通りに行くわよ」
「はいはい」
二人はダンジョンランドへ入っていった。
最初の予定は映画だった。
席に座り、映画が始まる。
アクション映画だった。
激しい戦闘。
爆発。
派手な演出。
アレンは普通に映画を楽しんでいた。
隣を見る。
セレスティアも普通に見ている。
そして、映画の途中。
「……アレン」
「なんだ?」
「台本で泣けと書いてあるわよ」
「無茶だろ」
「そう?」
「アクション映画だぞ」
「感動的な場面はあるでしょう?」
「あるにはあるけど、今じゃないだろ」
「そうね」
セレスティアは素直に台本へ書き込んだ。
「事前に調べておくべきね」
「そこを反省するのかよ」
セレスティアは真剣だった。
「次回の台本に活かしましょう」
「次回がある前提なのが怖いんだよ」
そんなやり取りをしているうちに、映画は進んでいった。
そして上映開始からしばらくして。
「……トイレ行きたくなったわね」
セレスティアが呟いた。
アレンは時計を見る。
「まだ二時間あるぞ」
「仕方ないわね」
「いや、仕方なくないだろ。行けよ」
「台本を守るのが大事よ」
「大惨事になったらどうする」
セレスティアは平然としていた。
「適切に処理する手段は身につけてるわ」
「何だよ、その自信」
アレンには意味が分からなかった。
しかしセレスティアは本当に動かなかった。
結局、映画が終わるまで二人は席を立たなかった。
「次はお化け屋敷か」
「そうね」
二人でお化け屋敷へ向かう。
中へ入る直前、セレスティアが台本を確認した。
「腕を組む」
「またかよ」
「台本通りよ」
セレスティアがアレンの腕に自分の腕を絡める。
そのまま歩き始める。
しばらく進んだところで、セレスティアが楽しそうに尋ねた。
「ねえ、嬉しい?」
「すげえうざい」
「ふふっ」
セレスティアは楽しそうだった。
「次は――膝枕ね」
「なんでそうなるんだよ」
「台本に書いてあるもの」
ベンチに座り、セレスティアが膝を差し出す。
アレンは仕方なく頭を乗せた。
「……」
「どう?」
「膝枕は悪くない」
「でしょう?」
セレスティアは満足そうだった。
「私に膝枕してもらったのは、あなたが初めてよ。嬉しい?」
「その聞き方がすげえうざい」
「そうかしら?」
「そうだよ」
しばらくして、アレンは空を見上げた。
「そろそろ終わりだな」
「そうね」
ようやく長かったデートも終盤に入った。
そこでアレンはふと思い出した。
「そういえばトイレは?」
セレスティアは何でもないことのように答えた。
「適切に処理したわよ」
「なんだよ適切って」
「適切は適切よ」
「だから具体的に言えよ!」
セレスティアは笑うだけだった。
アレンには最後まで意味が分からなかった。
こうして、よく分からないまま二人のデートは終わった。
ダンジョンランドの入り口まで戻ってくる。
セレスティアは満足そうに台本を閉じた。
「参考になったわ」
「俺はもう二度とやりたくない」
「そう?」
「そうだよ」
アレンはため息をついた。
そして、帰ろうとしたところで振り返る。
「……次はないよな?」
セレスティアは少し考えた。
「次の台本を作るには、もう少し経験が必要かしら」
「あるのかよ!」
アレンの声が、ダンジョンランドの入り口に響いた。




