フローラとのデート
アレンとフローラは、ダンジョンランドの前で待ち合わせをしていた。
二人の手には、なぜか台本がある。
フローラは台本を見つめていた。
なぜ自分が執事とデートをすることになったのか、意味が分からない。
それでも、お姉さまが用意したものなのだから、何か意味があるはずだ。
そう自分を納得させる。
「……開きましょうか」
「そうだな」
二人で一ページ目を開く。
『手を繋ぐ』
「…………」
フローラは固まった。
アレンも台本を見る。
「……これ、やるのか?」
「お姉さまが用意したものですから」
フローラはしばらく悩んだ。
「……納得しないと」
しぶしぶ手を差し出す。
アレンもその手を取った。
「…………」
「…………」
二人とも無言だった。
アレンはフローラの様子を見ていた。
明らかに不満そうだ。
「……普通はそうだよな」
アレンは心の中でそう思った。
クラリスは台本を楽しんでいた。
しかしフローラは違う。
二人は手を繋いだまま、ダンジョンランドへ入っていった。
最初の施設を回り、次のページを開く。
『お化け屋敷では腕を組んで歩く』
「…………」
フローラは渋々アレンの腕に手を添えた。
明らかに嫌そうだった。
次は観覧車。
『膝の上に座る』
「…………」
「これもやるのか?」
「お姉さまの台本ですから」
フローラは渋々従った。
そしてカフェ。
『アーンして食べさせる』
さらに、
『同じジュースにストローを二本さして飲む』
アレンは台本を見つめた。
「なんだこの地獄のような時間は」
フローラも無言だった。
それでも最後まで台本通りに進める。
途中でフローラが言った。
「アレンさん、私、トイレに行きたいです」
「行ってくれば?」
「台本では三十分後です」
アレンは台本を見る。
「……三十分なら我慢できるか?」
「それくらいなら」
「じゃあ我慢してもらうか」
「はい」
フローラは頷いた。
アレンは台本を見ながら呟く。
「台本通りは無茶だな。せめてベースで遊びがないと」
「私もそう思います」
分刻みのスケジュールに従い、二人のデートはようやく終わった。
アレンにとって、長く感じる一日だった。
そして、申し訳なくなったアレンは、フローラにお詫びの品を送った。
翌日。
フローラはセレスティアのもとを訪れていた。
「お姉さま」
「あら、フローラ。どうしたの?」
「昨日のデートなんですが……」
「ええ」
「いったい、あれはなんだったんですの?」
フローラは不満そうに話し始めた。
「手を繋ぐところから始まって、お化け屋敷では腕を組んで、観覧車では……」
「そう」
「しかも台本で時間まで決められていて、自由に遊ぶこともできませんでした」
セレスティアは黙って聞いている。
「正直、あれがデートだと言われても、私にはよく分かりません」
「でも、いいことあったでしょ?」
「……え?」
フローラは首を傾げる。
「なぜかダンジョンから豪華な品が届きましたけど」
「それよ」
セレスティアは笑った。
「あなたにはちゃんといいことがあったでしょう?」
「ですが……」
フローラはまだ納得していない。
「お姉さま、あれは何だったんですの?」
「あなたは私を信じたらいいのよ」
「…………」
フローラは少し黙る。
「分かりました」
納得はしていない。
だが、納得するしかなかった。
「それでいいのよ」
セレスティアは満足そうに笑った。
そして、何事もなかったかのように次のことを考え始める。
「さて……次は何をさせようかしら」




