リリアの快進撃
アレンはセレスティアと一緒に、マスタールームのモニターを見ていた。
画面に映っているのは、三十七階層。
「いよいよね」
「ああ」
今日はリリアが三十七階層に挑む日だ。
これまで何度も挑戦してきたが、三十七階層のリッチを倒すことができずにいた。
しかし、今回は違う。
先日、リリアのもとに届いた魔法防御付きの大楯。
それを使って、今回は正面からリッチの魔法を耐え抜く作戦だった。
やがて、三十七階層にリリアたちが姿を現す。
リリアは騎士団を見回した。
「あなたたちは、その大楯で私を守りなさい」
騎士たちが一斉に大楯を構える。
「三分守ったら、私たちの勝利ですわ!」
「おお!」
騎士団から気合いの入った声が上がった。
今日こそいける。
全員がそう思っていた。
そして――
三十七階層の奥で、リッチが動き出した。
「来ます!」
「陣形をとりなさい!」
リリアの声に合わせ、騎士団が素早く陣形を組む。
「お嬢様の魔法の邪魔をさせるな!」
リッチが魔法を放つ。
凄まじい魔力が一気に押し寄せてくる。
「来るぞ!」
「構えろ!」
騎士たちは大楯を前面に並べた。
魔法が大楯へと叩きつけられる。
ドォン!
凄まじい衝撃に、騎士たちの身体が後ろへ押される。
「耐えろ!」
「まだだ!」
魔法防御の付与された大楯が、リッチの魔法を必死に受け止める。
その間にも、リリアは動かない。
目を閉じ、魔法の詠唱を続けている。
「お嬢様を守れ!」
「絶対に近づけるな!」
リッチが距離を詰めようとする。
だが騎士たちは大楯を構えたまま前へ出た。
「押せ!」
「下がらせろ!」
大楯でリッチを押し返し、距離を近づかせない。
魔法を防ぎながら、さらに前へ。
その光景をモニターで見ていたアレンが感心する。
「ちゃんと大楯を使いこなしてるな」
「ええ」
セレスティアも満足そうに頷いた。
「これならリリアも魔法を完成させられそうね」
そのときだった。
リリアの周囲で、凄まじい魔力が膨れ上がった。
空気そのものが震える。
騎士たちもその異変に気づく。
「お嬢様の魔力が……!」
「もう少しだ!」
「絶対に時間を稼げ!」
リッチが再び魔法を放つ。
騎士たちは大楯を構え、真正面から受け止めた。
「ぐっ……!」
「耐えろ!」
「まだ三分経っていない!」
「俺たちがここで倒れたら、お嬢様の魔法が無駄になるぞ!」
リリアの魔力がさらに高まる。
そして――
「終わりですわ」
リリアが目を開いた。
「インフェルノ!」
凄まじい炎が放たれた。
リッチの身体が一瞬で炎に包まれる。
階層全体を照らすほどの炎。
騎士たちは大楯を構えたまま、その光景を見つめていた。
やがて炎が消える。
そこに――
リッチの姿は、もうなかった。
「…………」
一瞬の静寂。
そして。
「やりましたわ!」
リリアが拳を握る。
「うおおおおお!」
騎士団から歓声が上がった。
三十七階層。
ついに突破した。
何度挑んでも届かなかった場所を、ついに攻略したのだ。
「やりました!」
「三十七階層突破だ!」
「お嬢様、やりましたね!」
騎士たちも大喜びしている。
しかし、リリアはそこで終わらなかった。
「この勢いで、四十階層まで突破しますわよ!」
「おお!」
騎士団の勢いも止まらない。
モニターを見ていたアレンは苦笑した。
「……すごい魔法だったね」
「辺境伯に代々伝わる魔法ですね」
セレスティアが答える。
「帝国の侵攻を何度も防いだ、切り札ですわ」
「なるほどな」
アレンは改めてリリアを見る。
三十七階層を突破したことだけでも十分凄い。
だが――
「……それにしても」
「どうしたの?」
「リリア、三十七階層で満足してないぞ」
「ええ」
セレスティアは楽しそうに答えた。
「リリアは騎士団全員を冒険者登録させてますわ」
「それで?」
「全員をBランクにするつもりらしいわよ」
「……本気すぎるだろ」
アレンはモニターを見る。
リリアはすでに次の階層を見据えている。
「本業はどうなった?」
「さあ?」
セレスティアも苦笑する。
画面の中では、リリアが騎士たちに次の攻略について指示を出していた。
三十七階層を突破した。
だが、リリアの挑戦は終わらない。
むしろ――
ここからが本番だった。




