セレスティア国境に
セレスティアは、クラリスを迎えに国境へ向かっていた。
今回は一人ではない。
隣国との国境まで行くことになるため、王国騎士団が護衛についている。
セレスティアが乗るロールスロイスを中心に、騎士たちが周囲を固めて進んでいく。
「……ずいぶん道が良くなったわね」
以前は凹凸が多く、場所によっては進むだけでも苦労した道が、今ではかなり整備されている。
「王妃様が外国にインフラ整備を頼んだ成果が出ているようですね」
騎士の一人が答えた。
王妃様は、ダンジョンから得られる莫大な資金を使い、外国にもインフラ整備を依頼していた。
その成果が、こうして目に見える形で現れている。
「これなら予定より早く着きそうね」
「そうですね」
実際、予定よりかなり早く国境へ到着した。
そしてもう一つ、理由があった。
道中、全く魔物が出なかったのだ。
「今日は本当に魔物が出ませんでしたね」
「運が良かったのでしょう」
騎士たちはそう考えていた。
誰も気づいていなかった。
セレスティアたちの近くには、ピーちゃんがいる。
そしてピーちゃんの姿を見た魔物たちは、本能的に近づくことを避けていた。
そのため、道中の魔物はセレスティアたちの前から姿を消していたのである。
もちろん、本人たちはそんなことを知る由もない。
「予定よりかなり早く着いたわね」
セレスティアは国境の門で車を降りた。
そしてクラリスの到着を待つ。
やがて、隣国側から一行がやってきた。
その中に、クラリスの姿があった。
クラリスはセレスティアを見つけると、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「お久しぶりです、お姉さま!」
「よく来たわね、クラリス」
「やっと留学の許可がおりました!」
「あなたはずっと来たがっていたものね」
「はい。尊敬しているお姉さまのもとで勉強できるのが楽しみです!」
「好きなだけいてもいいわよ」
「ありがとうございます!」
クラリスは嬉しそうに笑った。
「ただ、帰りたくなくなるわよ」
「だったら、こっちで婚約者を見つけないといけませんね」
「あなたに釣り合う人は、なかなかいないわよ」
「そうなのですか?」
クラリスは少し考えたあと、すぐに別のことを口にした。
「それより、お姉さまが住んでいる町が楽しみです!」
「驚くと思うわよ」
「そんなにですか?」
「ええ」
セレスティアは車のほうへ歩き出す。
「行きましょうか」
「はい!」
クラリスも後を追う。
そして、車を見たクラリスが目を輝かせた。
「それがお姉さまの馬車ですか?」
「これは車って言うの」
「車……私も乗っていいの?」
「もちろん」
セレスティアは笑顔で答える。
「気に入ったら、あなたの分も用意するわ」
「お姉さま、素敵ですわ!」
その頃、ダンジョンにいるアレンは、まだ何も知らなかった。
クラリスのためにフローラと同等の家を用意することになるだけでも大変なのに。
さらにもう一つ。
ロールスロイスをもう一台用意することになることを。
「……また俺が作るのか?」
アレンがそれを知るのは、もう少し後のことだった。




