クラリスの家
アレンは、セレスティアから相談を受けていた。
場所はいつものダンジョンのボス部屋。
「アレン、お願いがあります」
「何だ?」
「隣国から、クラリスという娘がこちらに来ることになりました」
「クラリス?」
「私を姉のように慕っている娘です。以前から私のもとで勉強をしたいと言っていたのですが、今回こちらで暮らしながら学びたいそうです」
「そうか」
アレンは特に問題があるとは思わなかった。
「ホテルに泊まればいいじゃないか」
「よくないわよ」
即答だった。
「なぜ?」
「王族なのよ?」
「ホテルにも王族は泊まっているだろ」
「そういう問題じゃないわ」
セレスティアはため息をついた。
「クラリスは私が妹のように可愛がっている娘なの。長期間こちらで暮らすのに、ホテルの一室というわけにはいかないでしょう?」
「だったらリリアみたいに自分で建てさせろ」
「それも考えたわ。でも、今回は私が用意してあげたいの」
「区画は好きにしていいと言ってあるだろ」
「ええ。でも家はお願いしたいわ」
アレンは少し考える。
「……どんな家だ?」
「フローラと同じくらいの家で」
「フローラと?」
「ええ。同等のものをお願い」
アレンは少しだけ驚いた。
フローラの家は、ダンジョン内でもかなり立派な部類に入る。
「ずいぶん甘やかすな」
「あの娘は私が妹のように可愛がっているのよ」
「俺には関係ないだろ」
「王族で可愛いわよ」
「それがどうした」
セレスティアは少し考えてから、にっこり笑った。
「あなたは可愛い娘に洋服を送って楽しんでいたじゃない」
「それが関係あるのか?」
「絶対送りたくなるレベルよ」
「……ほんとか?」
「私が保証するわ」
アレンはしばらく黙った。
そして、あっさり折れた。
「……今回だけだぞ」
「ありがとう」
「フローラと同等の家。それでいいんだな?」
「ええ。家具も必要なものは揃えてあげて」
「分かった」
セレスティアは満足そうに頷いた。
「それじゃあ、私は隣国との国境までクラリスを迎えに行ってくるわ」
「そこまで行くのか?」
「もちろんよ。可愛い妹分を迎えに行くのだから」
そう言って、セレスティアは立ち上がった。
「じゃあ、家のほうは任せたわね」
「ああ」
セレスティアがボス部屋を出ていく。
アレンは一人になってから、ぽつりと呟いた。
「……そんなに可愛いのか?」
少しだけ興味が湧いていた。




