四人目の住民
王妃様とセレスティアとフローラは、王妃様の区画でお茶会をしていた。
テーブルには紅茶と菓子が並んでいる。
王妃様がふと、セレスティアの肩に止まっている小さな鳥に目を向けた。
「あら、かわいい鳥さんね」
「ダンジョンマスター様にもらいましたの」
セレスティアが答える。
「いいわね。私も何か飼おうかしら」
「いいと思いますわ」
フローラも鳥を見ながら頷く。
「ずいぶん懐いているのね」
「ええ。こちらの言っていることが分かるみたいですわ」
「ピー」
鳥が鳴く。
「あら、本当に返事をしたわ」
王妃様が笑う。
「名前はつけたの?」
「ピーちゃんですわ」
「……安直ね」
「私がつけたわけじゃないわ」
「そうなのですね」
フローラが小さく笑う。
「ピー」
「本人は気に入っているようですわ」
セレスティアが鳥を撫でる。
三人はしばらく鳥を眺めながらお茶を楽しんでいた。
やがて王妃様が周囲を見渡す。
「そういえば、ダンジョンマスター様から、この区画を私の好きにしていいと言われたわ」
「そうでしたわね」
「誰か招待したい人がいるなら、ここに住んでもらってもいいそうよ」
王妃様が二人を見る。
「誰かいるかしら?」
少し考えたあと、フローラが口を開いた。
「それなら、リリア様はどうかしら?」
「リリア様ね」
王妃様が頷く。
「確かに住みたそうにしていましたわ」
セレスティアも納得する。
「以前から、このダンジョンをかなり気に入っていましたものね」
「ええ」
フローラが頷く。
「ただ、リリア様が住みたい理由って……」
セレスティアが苦笑する。
「ダンジョンに挑戦したいから、拠点が欲しいだけの娘ね」
「ふふっ」
王妃様が笑う。
「それでもいいのではないかしら」
「私もそう思いますわ」
フローラが続ける。
「リリア様なら、この区画を拠点にして毎日のようにダンジョンへ挑戦するでしょうし」
「それは間違いないですわね」
セレスティアも笑う。
「それに、リリア様が一番この区画には相応しいのではないかしら」
「そうね」
王妃様も頷いた。
「では、今度会ったら話しておくわ」
こうして、四人目の住人はリリアに決まった。
その後、リリアに話が伝えられると、予想通り大喜びした。
「本当に住んでもいいのですか?」
「ええ。フローラがあなたを推薦してくれたのよ」
「ありがとうございます!」
リリアは嬉しそうにフローラを見る。
「これでいつでもダンジョンに挑戦できますわ!」
「やっぱり、そっちなのね」
王妃様が苦笑する。
「もちろん、王妃様のお近くに住めることも嬉しいですわ!」
「取ってつけたように言わなくてもいいわよ」
「そんなことありませんわ!」
そんなやり取りを、セレスティアは微笑みながら見ていた。
そして、リリアと二人きりになったところで、セレスティアが声をかける。
「リリア様」
「はい?」
「一つ、忠告しておきますわ」
「忠告?」
「ええ」
セレスティアは少しだけ意味深な表情を浮かべた。
「いつか、誰に見られているか分かりませんよ」
「……?」
リリアは首を傾げる。
「どういう意味ですの?」
「そのままの意味ですわ」
「誰に見られているのですか?」
「さあ?」
セレスティアは笑った。
「ただ、ダンジョンマスター様の近くで暮らすのですから、そのくらいは覚えておいたほうがいいと思いますわ」
「……よく分かりませんわ」
「そのうち分かりますわ」
セレスティアはそれだけ言って、お茶を口にした。
リリアは最後まで意味が分からず、首を傾げ続けていた。




