騎士団の苦悩
「アレン、また軍隊来てるよ」
アレンはダンジョンの様子を映す魔道具に目を向けた。
「また?」
「うん。月に一度くらいだったのに、前回から二週間しか経ってない」
「さすがに早いな。様子を見るか」
ダンジョンの入口には、前回と同じ騎士団が集まっていた。
ただし、今回は人数が少し違う。
前回まで連れてきていた精鋭部隊ではなく、比較的若い騎士たちが多かった。
その頃、隊長は出発の準備を終えていた。
「隊長、準備ができました」
「よし。化粧品は?」
「いつもの倍を要求されています」
「……長期戦を覚悟しろ」
「構いませんが、これって騎士団の仕事ですかね?」
「実戦訓練を兼ねている」
「敵が弱くて、実戦訓練になっているのか怪しいですけど」
「今回は連れてきている部隊を新人に変えた。野営訓練にもなる」
「ダンジョンから飯も出ますけどね」
「……文句があるなら次から来なくていいぞ」
「私は特別給金と酒が手に入るので参加しますよ」
「なら文句を言うな」
「了解しました」
「行くぞ」
騎士団はダンジョンへ入っていった。
今回の目的は、戦闘訓練。
そしてもう一つ。
ダンジョンでしか手に入らない物資の確保だった。
新人たちは先輩騎士から指示を受けながら、一階層、二階層と進んでいく。
何度か戦闘を繰り返し、十階層へ到着する。
「ここからは予定通りだ」
隊長が部隊を見回した。
「新人とベテランを分ける。各自、無理はするな」
部隊は複数に分かれ、それぞれが十階層の探索を始めた。
「一時間に一度、奥のガチャまで魔石を持ってこい」
「了解!」
「では行け!」
新人たちはそれぞれの持ち場へ向かっていった。
隊長も別の道を進む。
十階層の奥。
いつものガチャが設置されている場所まで来たところで、隊長が足を止めた。
「……ん?」
ガチャの奥。
今まで何もなかった壁に、階段がある。
「階段?」
隊長が近づいて確認する。
「どうします?」
副隊長が声をかけた。
「未知の階層だ」
隊長は階段を見つめる。
「新人には行かせられない」
「そうですね」
「自分とお前の二人で行くしかないな」
「了解です」
二人は階段を下りていった。
十一階層。
そこに現れたモンスターを見て、副隊長が剣を構える。
「敵は問題ないですね」
「自分らならな」
隊長は周囲を確認した。
「だが、連れてきた新人にはきついな」
「この任務で怪我をしたら、本業に支障が出ます」
「最初の精鋭だったら問題なかったんですけどね」
「あれはもうやらない」
「……本業に影響が出ましたからね」
「そうだったな」
二人は慎重に十一階層を進んでいく。
しばらくすると、見覚えのある装置が見えてきた。
「ガチャ、見つけました」
「十階層までとは違うな」
隊長がガチャの説明を確認する。
「排出率も違うみたいだぞ」
「それなら、使い道を分けた方が良さそうですね」
「どうする?」
「新人とベテランを半分にして、食料確保と資源確保に分けるのはどうでしょう」
「なるほど」
隊長は少し考える。
「新人は十階層で訓練を続けさせる。ベテランの一部を十一階層に回して資源を確保するか」
「それがいいと思います」
そして副隊長は、ふと思い出したように尋ねた。
「ところで、化粧品は派閥の長への貢ぎ物でしたよね?」
「ああ」
「評判が良かったら、もっと手に入れてこいと言われますよ?」
「……」
「専属の部隊を作りますか?」
隊長が無言で副隊長を見る。
「騎士団の仕事じゃねえよ」
「ですよね」
「そもそも、なんで俺たちはダンジョンに化粧品を取りに来てるんだ」
「特別給金と酒が出るからです」
「……」
「文句は言わない約束でしたよね」
「お前、最近調子に乗ってないか?」
「十一階層まで来られる程度には」
「関係ないだろ」
二人はそんな会話をしながら、十一階層のガチャを調べ始めた。




