最後の砦
「マスタールームに冒険者来れるようにしてないけど、どうやって相手のダンジョンを傘下にするの?」
アレンはふと疑問に思った。
自分のダンジョンでは、冒険者がマスタールームまで来ることはできない。
それなのに、どうやって相手のダンジョンを傘下にするのだろう。
「相手のダンジョンの最下層のボス倒したらダンジョンマスター出てきますよ」
「最下層のボスを倒したら?」
「はい。ダンジョンマスターが出てきます」
「そこにいるんだ」
アレンは少し意外そうな顔をした。
「倒したらダンジョンコアのルームにいけます」
「なるほど」
最下層のボスを倒せば、そのダンジョンのマスターと戦える。
そしてマスターを倒せば、ダンジョンコアのある部屋まで行ける。
そこでようやく、相手のダンジョンをどうするか選べるらしい。
「壊したらダンジョン潰せますし、魔力流して支配権を奪うこともできますよ」
「うちは?」
「はい?」
「いや、うちのダンジョンでも同じことできるの?」
「できますよ」
アレンは少し考えた。
自分のダンジョンも、他のダンジョンも、基本的な仕組みは同じらしい。
ただ、相手のダンジョンを傘下にする場合は、まず最下層まで攻め込まなければならない。
そこまで考えたところで、ダンジョンコアが何気なく口にした。
「クロノスを倒されたらマスターが迎えうってくださいね」
「無理だから」
アレンは即答した。
「なんでですか?」
「クロノスを攻め込ませるのはいいんだよ」
「はい」
「相手のダンジョンを落としに行って、クロノスが倒されても、それはしょうがない」
アレンにとって、そこは問題ではなかった。
クロノスを攻め込ませる。
相手のダンジョンを攻略する。
もしクロノスが倒されるほどの相手なら、その時点で撤退すればいい。
少なくとも、自分が戦う必要はない。
「でも、うちが攻められてクロノスを倒されたら話が違うだろ」
「そうですね」
「その場合、次は俺が迎え撃つことになるんだろ?」
「はい」
「無理だから」
アレンはもう一度、はっきりと言った。
「ダンジョン同士の紛争は絶対しないし、ダンジョンコアを差し出してでも俺は戦わないぞ」
「そこまでですか?」
「そこまでだよ」
アレンは真顔だった。
攻める側なら、クロノスを派遣すればいい。
クロノスが負けたなら、その時点で諦めればいい。
だが、自分のダンジョンが攻められた場合は違う。
クロノスが防衛に失敗すれば、その後に待っているのは自分だ。
そんな状況だけは絶対に避けたい。
「そもそも、クロノスを倒した相手を俺が迎え撃つっておかしいだろ」
「マスターですから」
「マスターだからって戦闘能力まで上がるわけじゃないから」
「そうですね」
「だったらなおさら戦わない」
アレンはきっぱりと言い切った。
他のダンジョンを傘下にすること自体には興味がある。
各国に一つずつダンジョンを落として、ハブダンジョンにするという構想も面白い。
だが、それと自分が戦うことは別問題だ。
「俺はダンジョンマスターだけど、戦闘員じゃないからな」
『……』
「そこは絶対に間違えるなよ」
アレンはダンジョンコアに念を押した。




