ハブダンジョン
「そういえば、前に他のダンジョンが攻めて来ようとしたよね?」
『ありましたね』
「よくあることなの?」
『よくはありませんよ』
「そうなのか?」
『軍勢を作るのに膨大なポイントを使いますから』
「ああ……」
アレンは納得した。
ダンジョンがモンスターを大量に用意するだけでもポイントが必要になる。
それを軍勢として揃え、さらに遠くまで移動させて他のダンジョンを攻撃するとなれば、相当なポイントを消費するのだろう。
「なら、なぜ攻めてきたんだ?」
『冒険者を奪われたからでしょう』
「冒険者を奪われた?」
『元々はGランクダンジョンだったから、競合していませんでしたから』
「ああ、なるほど」
アレンは思い出した。
以前は自分のダンジョンもGランク。
相手のダンジョンからすれば、わざわざ敵視する理由もなかった。
ところがアレンのダンジョンは急速に成長した。
冒険者が集まり、より多くの冒険者がこちらに滞在するようになった。
「つまり、自分のところに来ていた冒険者が、こっちに流れてきたからか」
『そう考えられます』
「でも、攻めてどうなるの?」
『ダンジョンを破壊して、大量にポイントを使わせます』
「……」
アレンは少し考えた。
「それ、割に合わないような」
『だから普通はやりませんよ』
「だよね」
相手のダンジョンを攻撃するために大量のポイントを使う。
それだけならまだいい。
しかし、相手のダンジョンを破壊できる保証もない。
仮に成功したとしても、消費したポイントが戻ってくるわけでもない。
「じゃあ、あの時はかなり無茶なことをしてきたんだな」
『そうですね』
「……仕返しに行った方がいいかな」
アレンは少し考える。
こちらから攻め込むなら、今度はこちらが圧倒的に有利だ。
「クロノスを派遣するだけだから、こっちにリスクないし」
『そうですね』
クロノスなら、アレン自身が危険な場所へ行く必要もない。
こちらのダンジョンを空ける必要もない。
ただクロノスを派遣するだけだ。
「ダンジョンを落として傘下にしますか?」
ダンジョンコアが淡々と尋ねる。
「傘下にしたら何かあるのか?」
『相手のダンジョンに移動するワープを作れます』
「ワープ?」
『はい』
「相手のダンジョンに直接行けるの?」
『可能です』
「それは便利だな」
アレンは少し考えた。
自分のダンジョンと別のダンジョンをワープで繋ぐ。
移動時間を大幅に減らせるなら、かなり便利そうだ。
「……でも、あのダンジョン近いからメリット薄いな」
『そうですね』
今回の相手は近い。
わざわざワープを作らなくても行ける距離だ。
せっかく傘下にしても、得られるメリットはそれほど大きくない。
アレンはそこで、ふと思いついた。
「待てよ」
『はい』
「各国にダンジョンを一つ落として、傘下にしたらすごいね」
『……』
「それぞれのダンジョンにワープを作るんだよ」
アレンの頭の中に、次々とイメージが浮かんでいく。
王国のダンジョン。
隣国のダンジョン。
さらに別の国のダンジョン。
それぞれをワープで繋いでいけば、各国を行き来するための拠点になる。
「一つのダンジョンを中心にするんじゃなくて、各国のダンジョンを繋いでいけば……」
アレンは考え込む。
「ハブダンジョンみたいにできたらすごいね」
『普通のマスターは思いつきません』
「そうなの?」
『はい』
「なんで?」
『他のダンジョンを傘下にすること自体を、通常のダンジョンマスターは考えません』
「なるほど」
アレンは少し得意げになった。
「せっかくダンジョンを運営してるんだから、使えるものは使わないとな」
他のダンジョンを潰す。
それだけなら、ただの争いで終わる。
だが、傘下にしてワープで繋げれば話は変わる。
各国に一つずつ拠点を持つ。
それらを繋いでいけば、ダンジョンを利用した巨大な移動網になる。
「……これ、結構すごいことになりそうだな」
『はい』
アレンはまだ見ぬ世界各地のダンジョンを思い浮かべた。
まさか、他のダンジョンの情報を聞いていただけなのに、こんな構想になるとは思っていなかった。




