他のダンジョン
アレンはふと気になったことをダンジョンコアに尋ねた。
「なあ、他のダンジョンの情報って分かるのか?」
『分かります』
「どれくらいあるんだ?」
『たくさんあります』
「そんなにあるのか」
アレンは少し驚いた。
自分が知っているダンジョンは、このダンジョンにやってくる冒険者たちから聞くものくらいだ。
世界には、自分が知らないダンジョンがどれだけあるのだろう。
「人間に見つかってないダンジョンもあるのか?」
『あります』
「たくさん?」
『いいえ。人間に見つかっていないダンジョンは、ほとんどありません』
「へえ……」
アレンは少し意外に思った。
ダンジョンなんて、人間が簡単に見つけられるような場所にあるとは限らない。
「地球でも人間が到達困難な場所は山ほどあるぞ。山の奥とか、砂漠とか、極地とか。そういう場所にもダンジョンはあるんだろ?」
『あります』
「じゃあ、そういうところのダンジョンには人間がほとんど来ないよな」
『はい』
「誰も来ないなら、どうなるんだ?」
『一定期間、冒険者が来ない場合は、スタンピードを起こします』
「スタンピードを起こすのか?」
アレンは思わず聞き返した。
『はい』
「わざわざ外に魔物を出して、人間に見つけてもらうってことか?」
『そうなります』
「ダンジョンも大変なんだな……」
アレンは妙な気分になった。
冒険者にとってダンジョンは攻略する場所だが、ダンジョン側にも冒険者に来てもらわなければならない事情があるらしい。
「じゃあ、そんな場所にあるダンジョンには、誰かが間引きに行くのか?」
『違います』
「違う?」
『ダンジョンを潰します』
「……潰す?」
『はい』
アレンは思わず聞き返した。
「ダンジョンって潰せるのか?」
『可能です』
「どうやって?」
『ダンジョンポイントをマイナスにします』
「ポイントをマイナスに?」
『はい。ダンジョンポイントをマイナスにすれば、ダンジョンは縮小して消えます』
「縮小して……消えるのか」
『はい』
アレンは少し考えた。
ポイントがなくなったら終わり、というわけではない。
マイナスになったダンジョンは縮小していき、最終的には消滅する。
「じゃあ、誰も来ないダンジョンは、スタンピードを起こす前に潰すこともあるってことか?」
『そうです』
「なるほどな」
アレンはそこで、ふと自分のことを思い出した。
「……なあ」
『はい』
「俺がダンジョンマスターになった時って、どうだったんだ?」
ダンジョンコアから返事が返ってくる。
『アレンがダンジョンマスターになった時は、縮小の一歩手前でした』
「…………」
アレンは黙った。
「縮小の一歩手前?」
『はい』
「それって、かなり危なかったんじゃないか?」
『危険な状態でした』
「……危ないな」
アレンは改めて自分がダンジョンマスターになったばかりの頃を思い出した。
あの時、もし自分が来ていなかったら。
今のように冒険者が集まることもなかった。
町ができることもなかった。
王妃が住むこともなかった。
そもそも、このダンジョン自体が残っていなかった可能性がある。
「俺が来るのがもう少し遅かったら、ダンジョンそのものが消えてたのか?」
『その可能性は高いです』
「……本当に危なかったな」
アレンはしみじみと呟いた。
今では世界でも有数の規模になりつつある自分のダンジョン。
しかし、その始まりは――
縮小の一歩手前だったらしい。
「よくここまで大きくなったもんだな」
アレンは自分のダンジョンを見ながら、そう呟いた。




