魔法の言葉
アレンはダンジョンのモンスターについて考えていた。
ダンジョンには様々なモンスターがいる。
だが、ふと思った。
「別に、モンスターの種類ってそんなに必要ないんじゃないか?」
例えばゴブリン。
ゴブリンならFランク。
少し上位のホブゴブリンならCランク。
ゴブリンリーダーならDランク。
ゴブリンチャンピオンならBランク。
ゴブリンジェネラルならAランク。
ゴブリンキングならA+ランク。
ゴブリンナイトならCランク。
そして、さらに強力なゴブリンジェネラルを作ればSランクにもできる。
アレンは頭の中で並べてみた。
「……ゴブリンだけで結構いけるな」
FランクからSランクまで、ゴブリンだけで揃えられる。
弱いゴブリン。
少し強いゴブリン。
特殊な能力を持つゴブリン。
強力なゴブリン。
王と呼ばれるゴブリン。
戦士として特化したゴブリン。
考えてみれば、ゴブリンという一種だけでもかなりの種類を作れる。
「まあ、他のモンスターもいるから、わざわざゴブリンだけにする必要はないけど」
そう考えながら、アレンはさらに上のランクについて考えた。
Sランクより上。
ここから先になると、単純に「強いゴブリン」と名前を付けるだけでは物足りない。
そこでアレンは、ある言葉を思い出した。
「エルダー」
古き者。
それだけで普通の個体より格上に感じる。
「エンシェント」
古代。
これも強そうだ。
エンシェントドラゴンという実例もある。
そして最後に。
「アルティメット」
アレンはその言葉を口にして、少し考えた。
「……強いな」
意味を考えてみても、かなり強い。
究極。
これ以上ないもの。
限界まで到達したもの。
「エルダー、エンシェント、アルティメット」
並べてみると、ただの接頭語なのに、それだけでモンスターの格が上がっているように感じる。
「これ、名前を付けるだけで強くなったように見えるな」
アレンは面白くなってきた。
エルダーゴブリン。
エンシェントゴブリン。
アルティメットゴブリン。
最後の名前だけ、明らかに別格だった。
「アルティメットは、最強って感じがする」
さらにアレンは考える。
「これ、人間につけたらどうなるんだ?」
アルティメットヒューマン。
究極の人間。
普通に考えれば、ものすごく強い人間という意味だ。
だが、アレンはそこで少し引っかかった。
「……いや」
究極。
それは単純な強さだけなのだろうか。
もし本当に「究極」というものを突き詰めた存在になったら。
強い人間ではなく、人間という存在そのものの究極。
さらに突き詰めれば、強さという概念ですら超えてしまいそうな気がする。
「……概念になりそうだな」
アレンは自分で言っておきながら、少し怖くなった。
エルダーなら分かる。
エンシェントも分かる。
だが、アルティメットは違う。
名前からして、もう「これ以上はない」と宣言している。
「やっぱりアルティメットは凄いな」
アレンは改めて三つの言葉を思い浮かべる。
エルダー。
エンシェント。
アルティメット。
ただ名前に付けるだけで、途端に格が上がる。
「魔法の言葉だな」
アレンはそう結論づけた。
そして、アルティメットという言葉については、それ以上考えるのをやめた。
最強という言葉を、名前だけで表現できてしまう。
それだけでも十分に恐ろしい言葉だった。




