11階層
アレンのダンジョンには、ベテラン冒険者や軍隊まで訪れるようになっていた。
彼らの多くが活動する場所は十階層。
いつの間にか、十階層では冒険者同士の物々交換まで行われるようになっていた。
「化粧品が欲しいんだけど、余ってないか?」
「化粧品なら一つあるぞ」
「何と交換する?」
「酒はないか?」
「酒ならある」
「それなら交換しよう」
目的の違う冒険者たちが集まっている。
化粧品が欲しい者。
布が欲しい者。
酒が欲しい者。
食料を求める者。
それぞれが別々の目的でダンジョンへ来ている。
自分にとって不要な商品でも、別の誰かにとっては欲しい商品だった。
「布を持ってきたぞ。酒と交換できる奴はいないか?」
「俺は酒を余らせてる」
「じゃあ交換しよう」
「待ってくれ。俺は布が欲しい」
「お前は何を出せる?」
「化粧品が一つある」
「それなら俺の布と交換しよう」
いつの間にか、十階層の一角では冒険者たちが商品を並べるようになっていた。
正式な店ではない。
ただ地面に商品を置いて、交換相手を探しているだけだ。
それでも人は集まる。
ガチャを回す。
欲しい商品が出る。
自分には必要ない商品なら、別の冒険者に交換を持ちかける。
そして、またガチャを回すために魔石を集める。
そんな循環が生まれていた。
「なんだこれ……」
アレンは十階層の様子を見ながら呟いた。
「ダンジョンなのに市場みたいになってる」
しかも、十階層に集まっているのは冒険者だけではない。
化粧品を目的に来る軍人。
酒を目的に来る冒険者。
布を求める冒険者。
純粋にダンジョン攻略を目的にしているベテラン冒険者。
目的はバラバラだった。
だが、全員が十階層に集まっている。
「これはこれで面白いな」
アレンはしばらく十階層を眺めていた。
そして、あることに気づく。
「……そろそろ十一階層を作ってもいいな」
以前なら、十一階層を作っても来る人間がいなかった。
十階層まで来ることのできる冒険者自体が少なかったからだ。
だが、今は違う。
十階層まで来る冒険者が増えた。
しかも、十階層まで来る理由まで増えている。
「よし、作るか」
アレンは十一階層の作成を始めた。
完成まで二十四時間。
「二十四時間か」
すぐに完成するわけではない。
アレンは、完成するまでの間に十一階層について考えることにした。
「十階層までとは差別化しないとな」
十一階層を作るなら、十階層と同じような場所にはしたくない。
特にガチャの商品は重要だ。
「食料品はやめるか」
十階層のガチャには、弁当や飲み物などの食料品が入っている。
十一階層でも食料品を出す必要はない。
「お腹がすいたら十階層まで戻ってガチャを回せばいい」
そうすれば、十一階層まで進んだ冒険者が、食料を求めて十階層へ戻ってくることになる。
十階層にも、まだ役割が残る。
「じゃあ、十一階層には別のものを入れよう」
アレンは考えた。
そして、一つのアイデアを思いつく。
「ピックアップガチャにするか」
十一階層では、特定の商品が出やすくなるピックアップガチャを設置する。
十階層までのガチャとは、狙える商品を変える。
「これなら各階層でピックアップを変えればいい」
例えば十一階層では布。
十二階層では酒。
十三階層では化粧品。
そんなふうに、階層ごとに目玉商品を変えていく。
「欲しい商品がある冒険者は、その階層まで行けばいい」
そうすれば、冒険者が一つの階層に集中することもなくなる。
十階層には十階層の目的がある。
十一階層には十一階層の目的がある。
さらに上の階層にも、それぞれ別の目的を作れる。
「これなら、各階のピックアップを変えたら冒険者をばらけさせることもできるな」
アレンは満足そうに頷いた。
ダンジョンを難しくするだけが、階層を増やす方法ではない。
欲しい商品を変えるだけでも、冒険者は次の階層を目指してくれる。
「ナイスアイデアだ」
アレンは完成まで二十四時間と表示された十一階層を眺める。
明日には、新しい階層ができる。
そしてそこから、また新しい冒険者の流れが生まれる。
「さて、十一階層のピックアップは何にするかな」
アレンは新しい商品の候補を考え始めた。




