軍隊
「アレン、冒険者らしくない人たちが来てるよ」
ダンジョンの様子を確認していたアレンに、声がかかった。
「冒険者じゃない?」
アレンが確認すると、確かにいつもの冒険者とは雰囲気が違う。
武器や防具を身につけているが、装備には統一感がある。
それに、動きも妙に揃っている。
「軍隊みたいだね」
「何の用なのかな?」
「分からない。しばらく見ていよう」
アレンは、その集団の動きを観察することにした。
ダンジョンの入口。
集団の先頭に立つ男が、周囲を見回した。
「隊長、準備万端です。いつでもいけます」
「よし」
隊長と呼ばれた男が頷く。
「まさか自分たちがダンジョンに入ることになるとはな」
「仕方ありませんよ」
部下の一人が苦笑する。
「化粧品は産出量が少ないから買えないですから」
「まったくだ」
どうやら、化粧品を手に入れられなかった貴族が、部下たちに化粧品を取りに行くよう命じたらしい。
「化粧品以外は参加者で分配していいと言っていたので……」
隊員が周囲を見回す。
「酒でも持って帰ろう」
「帰ったら宴会ですね」
「それを楽しみにしているのはお前だけじゃないぞ」
隊員たちから笑い声が上がる。
アレンは、その様子を眺めていた。
「ずいぶん楽しそうだな」
軍隊の一行はダンジョンへ入っていった。
一階層。
二階層。
三階層。
新人冒険者なら慎重に進む場所でも、彼らは足を止めない。
四階層を越え、五階層へ。
そして六階層、七階層、八階層、九階層。
迷うことなく十階層までたどり着いた。
「速いな」
アレンが感心する。
「ここに連れてきたメンバーは精鋭だ」
隊長が十階層を見渡した。
「散らばってモンスターを倒すぞ」
「了解!」
隊員たちが一斉に散開する。
モンスターが襲いかかる。
しかし、モンスターと一対一で戦っても、遅れを取る者はいない。
次々とモンスターを倒していく。
「強いな」
アレンは素直に感心した。
十階層まで迷わずたどり着いたのも納得できる。
隊員たちは倒したモンスターから魔石を集めていく。
そして、十分な魔石が集まると、スペシャルガチャを回す。
化粧品や酒の排出率は高くない。
そのため、一度で目的の商品が出ることは少ない。
出なければ、またモンスターを倒す。
魔石を集める。
そして、もう一度ガチャを回す。
「長い時間滞在してもらえたな」
アレンにとっては理想的だった。
さらに、五階層には休憩できる場所がある。
食料や水も手に入る。
そのため、彼らは途中で町へ戻ることなく、ダンジョン内で休憩を挟みながら活動を続けることができた。
やがて、軍隊の一行はダンジョンを出ていった。
そして翌月。
「また来たよ」
「同じ人たち?」
「うん」
アレンが確認すると、前回と同じ軍隊だった。
「今回も化粧品を手に入れて帰るぞ!」
隊長の声が響く。
隊員たちも気合いが入っている。
その後も、彼らは月に一度のペースでダンジョンへ来るようになった。
化粧品を手に入れるために魔石を集める。
酒が出れば喜ぶ。
食料が出れば、その場で食べたり持ち帰ったりする。
そして、また翌月にやってくる。
「月に一度は来るようになったな」
アレンは、定期的に訪れる軍隊を眺めていた。
冒険者だけではない。
こうしてアレンのダンジョンには、新しい客層まで増え始めていた。




