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スペシャルガチャ

アレンのダンジョンは、安定して黒字になっていた。


 冒険者の数も大きく減ることはなく、商人までダンジョン前に店を構えるようになった。


 ダンジョンとしては、かなり順調な状態だった。


「問題は……十階層だな」


 アレンはダンジョンの状況を確認する。


 一階層と二階層には冒険者見習い。


 三階層と四階層には新人冒険者。


 五階層から九階層は、ある程度慣れた冒険者。


 そして十階層には、このダンジョンの適正を超えたベテラン冒険者が挑んでいる。


 しかし、十階層まで来る冒険者はまだ少ない。


「十一階層を作るのは、まだ早いな」


 十一階層を作れば、それだけダンジョンの維持にもポイントが必要になる。


 今の冒険者たちが成長して、十階層に挑む人数が増えてからでも遅くはない。


「しばらくは冒険者の成長待ちだな」


 アレンはそう判断した。


 そして、最近もう一つ面白い変化が起きていた。


「五階層が、思ったより使われてるな」


 五階層には、冒険者を襲ってこないモンスターが配置されている。


 最初は、ガチャ目当ての冒険者からすれば効率の悪い階層だと思われていた。


 敵が襲ってこない。


 つまり、魔石を集めることができない。


 わざわざ五階層まで来て休むくらいなら、先へ進んだほうがいい。


 アレンも最初はそう考えていた。


 ところが、冒険者たちは別の使い方を始めた。


「敵が襲ってこないなら、休憩するには最適ってことか」


 五階層では戦闘をする必要がない。


 そのため、食事をしたり、装備を確認したり、仲間と話をしたりする冒険者が増えていた。


 そのうち、五階層で寝泊まりする冒険者まで現れた。


「これは予想外だったな」


 アレンにとっては嬉しい誤算だった。


 冒険者が長時間ダンジョンに滞在してくれれば、それだけダンジョンにも利益が入る。


 さらに、ダンジョン前には商人も来ている。


 食料や水を買って、そのままダンジョンに長時間滞在する冒険者も増えていた。


「なら、もう一つ試してみるか」


 アレンはガチャの隣に新しい設備を設置することにした。


 通常のガチャとは別のガチャ。


「スペシャルガチャだ」


 通常のガチャよりも必要な魔石は多い。


 レートは十倍。


 通常のガチャでは出せない、もっと高価な商品を入れる。


「通常のガチャは百円相当までだったけど、これなら千円相当の商品を出せる」


 商品単価が上がれば、それだけ商品の種類も増やせる。


 今までなら入れられなかった商品も、景品にできる。


「冒険者が増えるきっかけになるかもしれないな」


 アレンはさっそくスペシャルガチャを稼働させた。


 だが、予想通りというべきか、一階層から五階層あたりを活動場所にしている冒険者は、ほとんど回さなかった。


「まあ、そうなるよな」


 必要な魔石が多い。


 初心者にとっては、それだけの魔石を使ってまで高価な商品を狙うメリットが少ない。


 スペシャルガチャを回し始めたのは、六階層以降まで進める冒険者たちだった。


 そして、その中でも特に好評だったのが食料品だった。


「弁当が人気なのか」


 アレンはガチャの結果を確認する。


 弁当。


 保存の利く食品。


 飲み物。


 菓子。


 普段なら町に戻って補給しなければならないものが、ダンジョンの中で手に入る。


「これなら途中で町に戻らなくてもいいからな」


 これは大成功だった。


 冒険者たちは、ガチャから出た食料をそのままダンジョン攻略に利用するようになった。


 町へ戻る回数が減る。


 その分、ダンジョンに長く滞在する。


 アレンにとっては理想的な結果だった。


「やっぱり食料品は強いな」


 ただ、アレンにはもう一つ目玉として考えていた商品があった。


 化粧品だ。


 この世界では、現代日本ほど簡単に手に入るものではない。


 そのため、女性冒険者を中心に人気が出ると予想していた。


「化粧品が一番人気になると思ったんだけどな」


 ところが、実際の結果は違った。


 一番人気だった商品。


 それは――酒だった。


「……酒か」


 アレンは思わず画面を見直した。


 スペシャルガチャの景品として酒が出るようになると、冒険者たちは驚くほどガチャを回した。


「そんなに欲しかったのか」


 ダンジョン攻略。


 休憩。


 寝泊まり。


 そして酒。


 五階層は、いつの間にか冒険者たちにとって一つの拠点のようになり始めていた。


「……まあ、酒を飲んでから攻略するのはやめてほしいけどな」


 アレンは五階層で酒盛りを始めた冒険者たちを眺めながら、そう呟いた。


 ダンジョンは、アレンが想定していたものとは少しずつ違う形へ変化していた。


 だが、それでもいい。


 冒険者が来る。


 長く滞在する。


 そして、ダンジョンは利益を生み出す。


「十一階層を作るより、今はこっちのほうが面白そうだな」


 アレンは、次に何をガチャへ入れるか考え始めた。

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