ガチャの役目
アレンは、そろそろガチャの役目も終わったのではないかと思っていた。
ダンジョンができたばかりの頃、ガチャは大きな役割を果たしていた。
この世界には存在しないような珍しい物が出てくる。
手鏡、ガラス製品、タオル、コピー用紙。
どれもこの世界では珍しく、冒険者たちはガチャを回すことを楽しみにしていた。
だが、何度もガチャが引かれるようになったことで状況は変わった。
最初は珍しかった商品も、今では珍しくない。
「またこれか」
そんな声が聞こえることすらある。
珍しい物を手に入れるためのガチャだったはずが、いつの間にか日常の一部になっていた。
そして、もう一つ問題があった。
ガチャから食料が出ていることだ。
食料を目当てにガチャを引く人間もいる。
もしガチャから食料が出なくなれば、困る住民も出てくる。
アレンは考えた。
「食料が必要なら、普通に作れるようにすればいいか」
そこで畑エリアを作った。
広い土地が用意され、そこでは種を植えるだけで作物が育つ。
ほとんど手入れをする必要もない。
農家にとっては、かなり楽な土地だった。
さらに畜産エリアも作った。
そこには広い牧草地があり、牧草は自然に生えてくる。
家畜を育てるには十分な環境だった。
すると、ダンジョンの中で暮らしていた人間たちが、それぞれ勝手に仕事を始めた。
農家の家を継げない息子が畑を耕し始める。
作物の実りが悪い村では、村人たちが話し合って移住を決める。
そして、ある日には村人がまとまってダンジョンへやってくる。
特別な許可を取る必要はない。
ダンジョン内では自由に暮らしていい。
土地が必要なら空いている場所を使えばいい。
仕事をしたければ、自分で仕事を始めればいい。
そのため、移住してきた人間たちは自然と新しい土地を開拓していった。
農業をする者。
家畜を育てる者。
木を切る者。
木材を加工する者。
魚を獲る者。
船を作る者。
ダンジョンに新しいエリアが増えるたび、それを利用する人間も増えていった。
アレンはそんな様子を見ながら、少し不思議な気分になっていた。
「いつの間にか、勝手に人が増えてるな」
だが、それでいい。
アレンは住民の生活にいちいち口を出すつもりはない。
ダンジョンで暮らすなら、好きに生活すればいい。
アレンが作った環境をどう使うかは住民次第だ。
そして今、1階層の町を除けば、少しずつ普通のダンジョンに戻っていた。
町の外には森がある。
畑が広がり、牧草地もある。
海では漁師が魚を獲り、船大工が船を作っている。
その一方で、冒険者は魔物を倒し、鉱石を採掘している。
ガチャの商品は、もう以前ほど珍しくない。
食料もガチャに頼る必要がなくなった。
気がつけば、1階層の町を除けば、普通のダンジョンに戻りつつあった。
アレンはその光景を眺める。
「ガチャの役目も、そろそろ終わりかな」
最初は珍しい商品を出すための仕組みだった。
食料を供給する役割もあった。
だが今は違う。
ダンジョンそのものが、生活に必要なものを生み出せるようになっている。
そして人が増えれば、また新しい仕事が生まれる。
ダンジョンはまだまだ大きくなっていく。
そこに住む人間も、まだまだ増えていきそうだった。




