新エリア
アレンは今のダンジョンに何が足りないのかを考えていた。
鉄や銅は手に入る。
宝石もある。
魔石も大量に採れる。
食料も問題ない。
冒険者が生活するための環境も整っている。
だが、どうしても不足しているものがあった。
「木材と海産物か」
ダンジョンの中だけで生活する人間が増えている以上、木材は必要になる。
建物を作るにも使うし、家具にも使う。
木工職人がいれば、さらに町を発展させることもできる。
海産物も同じだった。
魚や貝などが安定して手に入れば、食生活も豊かになる。
「じゃあ、作るか」
アレンは深く考えず、新たなエリアを作ることにした。
一つは森。
もう一つは海だった。
森エリアには大量の木々が生い茂り、木材を採取できるようになった。
すると、すぐに変化が起きた。
「木があるなら、木こりが仕事になるな」
ダンジョン周辺の町から木こりがやってくる。
さらに木材を加工するための木工所まで作られた。
家具や建物の材料を作る職人も移住してくる。
森ができただけなのに、木材を扱う産業が生まれた。
アレンはその様子を見て、
「やっぱり資源があると人が集まるんだな」
と感心していた。
そして、もう一つの海エリア。
こちらは森以上の反響を見せた。
海を見た人間は驚いた。
ダンジョンの中に、これほど広い水域が存在するとは誰も思っていなかったからだ。
最初は魚を獲るために漁師がやってきた。
魚が獲れる。
貝も獲れる。
海産物を求める商人もやってくる。
すると漁師たちが、
「ここなら仕事がある」
と移住を始めた。
さらに海があるなら船が必要になる。
船を作るために船大工までやってきた。
ダンジョンに船大工が移住してきたと聞いたアレンは少し驚いた。
「船大工まで来るのか」
海は外の海とは繋がっていない。
それでも、漁をするための船は必要になる。
小型の漁船を作り、湖のような海で魚を獲る。
それだけでも十分な仕事になるらしい。
そして海産物だけでは終わらなかった。
「泳げる場所も作ったらいいんじゃないか?」
誰かがそんなことを言い出した。
海水浴場が作られた。
砂浜が整備され、海で遊ぶ人間が増えていく。
冒険者ではない。
漁師でもない。
ただ海で遊ぶためにダンジョンへ来る人間まで現れた。
アレンはその光景を見ながら思った。
最初は、足りない資源を補うために森と海を作っただけだった。
それなのに森には木こりと木工職人が集まり、海には漁師と船大工が集まった。
さらに海水浴場までできた。
人が増えれば店も増える。
店が増えれば商人も増える。
住む人間が増えれば、家も必要になる。
家が増えれば、また職人が必要になる。
町はさらに大きくなっていた。
「……まだまだ大きくなりそうだな」
アレンはダンジョンを眺める。
以前は冒険者が魔物を倒すために訪れる場所だった。
それが今では、冒険者だけではなく、商人、職人、漁師、木こり、船大工、観光客まで集まっている。
ダンジョンの中で仕事をする人間が増え、そこで暮らす人間も増えていく。
そして人が増えれば、さらに新しい仕事が生まれる。
「まあ、悪くないか」
アレンは満足そうに頷いた。
ダンジョンはまだまだ大きくなる。
そして、ここに住む人間もまだまだ増えていきそうだった。




