豪華な荷物持ち
勇者がダンジョンに来ている。
その話は、すぐにダンジョン内を駆け巡った。
そして、それを聞いたSランクパーティーも反応した。
「勇者が来てるのか?」
「ああ、さっき見かけたぞ」
Sランクパーティーには、勇者に声をかける理由があった。
以前、このダンジョンで勇者の荷物持ちをしたことがある。
そのとき、勇者からボスのドロップアイテムをもらった。
Sランクパーティーにとっても、忘れられない出来事だった。
「だったら、今回も荷物持ちをするか」
「そうだな」
Sランクパーティーは勇者を見つけると、さっそく声をかけた。
「勇者、今回も荷物持ちをします」
勇者はSランクパーティーを見ると、少し驚いた。
以前にも荷物を持ってもらったことがある。
「すまない。助かる」
勇者は素直に頼むことにした。
しかし、Sランクパーティーはそこで少し気になった。
勇者は戦うつもりなのだと思っていた。
ところが、話を聞いてみると違った。
「今回は付き添いだ。俺は戦うつもりはない」
「え?」
Sランクパーティーは思わず聞き返した。
勇者が戦わない。
では、誰が戦うのか。
その答えは、新しい聖女だった。
「聖女が戦う」
勇者がそう言う。
Sランクパーティーは聖女を見る。
どう見ても後衛だ。
勇者パーティーで聖女が後衛を担当するのは珍しいことではない。
回復や支援を担当するのだから、当然の役割でもある。
だが、その聖女が一人で戦う。
「……聖女がソロで挑むんですか?」
Sランクパーティーには無茶にしか思えなかった。
勇者が付き添うだけで戦わない。
そして、後衛の聖女が一人でボスと戦う。
いくら次世代の聖女とはいえ、さすがに厳しいだろう。
そんなことを考えながら、Sランクパーティーは聖女と一緒にダンジョンを進んだ。
そして30階層。
聖女は一人でボスに挑んだ。
Sランクパーティーは、最初は心配そうに見ていた。
だが、その心配はすぐに消えた。
聖女は30階層のボスを相手にしても、苦戦する様子をまったく見せなかった。
一人で戦っている。
それなのに、動きに無駄がない。
ボスの攻撃を避け、反撃する。
そのまま戦いを進め、ついには30階層のボスを一人で倒してしまった。
「……」
Sランクパーティーは言葉を失った。
後衛の聖女がソロで戦う。
しかも、30階層のボスに苦戦することなく勝ってしまった。
「……本当に、俺たちと同じ人間なのか?」
誰かが思わず呟いた。
もちろん聖女は人間だ。
だが、目の前で見せられた強さを考えると、自分たちと同じ人間だということが信じられなくなっていた。
勇者はそんなSランクパーティーの反応を見ながら、特に驚いた様子もなかった。
聖女がそれほどの実力を持っていることを、すでに知っているのだろう。
そのまま一行はダンジョンを進んでいく。
そして37階層へ到着した。
そこには、まだ37階層を突破できていない勇者候補たちの姿があった。
勇者候補たちは、勇者が来たことに気づく。
「勇者……」
自分たちが目指している存在が、目の前にいる。
しかも、その勇者の隣には新しい聖女がいる。
そして、その聖女は30階層のボスを一人で倒してきた。
勇者候補たちは複雑な表情になった。
自分たちはまだ37階層を突破できていない。
それなのに、勇者と聖女は先へ進もうとしている。
「俺たちが不甲斐ないからだ……」
勇者候補の一人が悔しそうに呟いた。
勇者が引退できないのも、自分たちが次の勇者になれていないからだ。
自分たちがもっと強ければ。
自分たちがもっと早くダンジョンを攻略できていれば。
そんな思いが込み上げ、勇者候補たちは悔しさを噛みしめていた。




