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勇者と新しい聖女

教会は、聖女のことを心配してはいなかった。


次世代の聖女は、すでに先代からの引き継ぎを終えている。


聖女として必要なことは教えられており、力を確かめる必要すらない。


今すぐに勇者と旅立てるレベルに達している。


だから、聖女については問題ない。


むしろ教会が心配していたのは、勇者のほうだった。


「次の勇者は、いつ決まるのでしょうか?」


教会の聖職者たちは、そう話し合っていた。


現在の勇者は、すでに引退を表明している。


ところが、次代の勇者が決まる気配がない。


このまま次の勇者がなかなか決まらなければ、今の勇者が再び冒険に出る必要すらあるのではないか。


そんな可能性まで考えなければならなかった。


勇者本人としては引退したい。


しかし、後継者が決まらない以上、勇者としての役目を完全に終えることもできない。


教会としても、これは簡単には扱えない問題だった。


そこで、勇者と教会は今後について打ち合わせを行った。


「いざとなれば、以前のメンバーを集めることはできます」


勇者もそう答えた。


以前一緒に冒険していた仲間たちなら、声をかければ集めることはできる。


長い間、同じパーティーで戦ってきた仲間だ。


必要になれば、再び一緒に冒険することもできる。


だが、その前に一度試してみることになった。


今の聖女と一緒にダンジョンへ行ってみよう。


新しい聖女と実際に冒険してみれば、どの程度の連携が取れるのかも分かる。


もしかしたら、思っていた以上に相性がいいかもしれない。


そうして、勇者と新しい聖女はダンジョンを訪れることになった。


ダンジョンに到着した二人が中へ入る。


その瞬間だった。


「あれ……勇者じゃないか?」


「本物の勇者だ!」


「勇者が来てるぞ!」


勇者の姿に気づいた冒険者たちが、次々と集まってきた。


一人が近づけば、また一人。


その姿を見た別の冒険者も足を止める。


気がつけば、勇者の前には人だかりができていた。


「勇者様ですよね?」


「ええ、まあ……」


「映画で見たのと同じだ!」


「本当に勇者がいる!」


勇者は困惑していた。


なぜ自分のことを知っているのだろう。


ここにいる冒険者のほとんどと面識はない。


それなのに、誰もが自分のことを知っている。


「……なんで、みんな俺のことを知っているんだ?」


勇者には、その理由が分からなかった。


実は、アレンが映画で勇者を宣伝したことによって、勇者の知名度は抜群になっていた。


勇者本人が知らないところで、勇者という存在はすでに多くの人間に知られていたのだ。


「勇者様、握手してください……」


「握手?」


「映画に出ていた勇者様ですよね?」


「映画?」


勇者はますます困惑する。


自分が映画で宣伝されていることなど、詳しく知らない。


それなのに、知らない人間まで自分のことを知っている。


今までの冒険では、こんな経験はほとんどなかった。


自分は勇者なのだから、知られているのは当然なのかもしれない。


そう考えようとしても、目の前の人だかりを見ると落ち着かない。


それでも、悪い気はしなかった。


むしろ、自分が勇者として知られていることを実感すると、少し嬉しくなる。


「……勇者って、こんな感じなのか」


戸惑いながらも、勇者は集まってきた人々に囲まれていた。

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