勇者候補とAランクボス
勇者候補ぐらい強ければ、モンスターの出てくる強さの順番が違うなんて気にしていなかった。
普通のダンジョンなら、弱いモンスターから戦い始め、少しずつ強いモンスターと戦っていく。
そして、その階層に出てくるモンスターを倒して経験を積み、最後に待っているボスへ挑む。
しかし、このダンジョンは違った。
先にボスを倒さなければ、その先の階層へ進めない。
それでも勇者候補たちは、そこまで気にしていなかった。
自分たちほどの実力があれば、モンスターの出てくる強さの順番が多少違っていても、戦えるだけの力がある。
30階層を突破し、37階層のリッチも突破する。
その後も40階層を越え、41階層から49階層まで進んでいく。
順番が普通と違っていても、勇者候補たちにとっては大きな問題にはならなかった。
そして、いきなりAランクボスと戦わされる50階層へ到達する。
ここで初めて、今までとは明らかに違う壁にぶつかった。
50階層のボスは、Aランク冒険者がパーティーを組んで倒すことを前提としたボスだった。
Aランク冒険者が一人で戦うことを想定した相手ではない。
パーティーなら、戦い方はいくらでもある。
仲間がボスの意識を反らしている間に、別の仲間が攻撃する。
攻撃を受けそうになれば、防御を担当する仲間が守る。
攻撃する者、防御する者、ボスの意識を引きつける者。
それぞれが役割を分担することで、一人ではできない戦い方ができる。
しかし、勇者候補は一人だった。
ボスの意識を反らすのも自分。
攻撃するのも自分。
防御するのも自分。
それら全てを一人でやらないといけない。
攻撃に集中すれば防御が疎かになる。
防御を意識すれば攻撃の機会を逃す。
ボスの意識を自分から逸らすこともできない。
パーティーなら仲間に任せられることまで、全部自分でやらなければならなかった。
「これは……一人では厳しいな」
50階層のボスを前にして、勇者候補たちも苦戦した。
勇者候補ぐらい強ければ、それまでの階層なら多少の無理は力で押し通すことができた。
だが、50階層ではそれが通用しない。
Aランク冒険者がパーティーで倒すことを前提としたボスを、一人で倒さなければならないのだ。
勇者候補は何度も挑戦した。
それでも、誰も突破できなかった。
こうしてダンジョンの進行具合は、三つのグループに分かれた。
50階層まで到達したトップグループ。
40階層まで進んだ第2グループ。
そして37階層のグループ。
勇者候補たちでさえ50階層を突破できず、ここで初めてダンジョン攻略の進み方に大きな差が生まれることになった。




