勇者候補のトップ層
37階層。
多くの勇者候補がここで足止めされていた。
リッチに有効な攻撃を与えられず、装備を集め直す必要があるからだ。
だが、その中でも早く37階層を突破した勇者候補がいた。
「これで先に進める」
リッチとの戦いは楽ではなかった。
攻撃が通りにくいことに気づいてからは、戦い方を変えた。
持っていた装備を組み合わせ、魔法も使い、時間をかけてリッチを追い詰めた。
そして、ついに突破した。
38階層。
39階層。
40階層。
初めて来る階層ばかりだったが、立ち止まることはなかった。
「この程度なら問題ない」
40階層のボスを倒し、41階層へ進む。
そこでも、今まで見たことのない景色が待っていた。
「……なんだ?」
目の前に、長い廊下があった。
その入口には看板が立っている。
『試練の廊下』
そして、その下には、
『この先に進む実力があるか、廊下に挑戦してみよう』
と書かれていた。
勇者候補は看板を読んだ。
「試練の廊下……?」
少し考える。
この先へ進むために必要なものなのか。
そう思って周囲を見る。
すると、廊下の中から声が聞こえてきた。
「俺は半分いけたぞ!」
「俺は八割いったぜ!」
「スゲーなお前!」
どうやら、冒険者たちはこの廊下に挑戦しているらしい。
一人が廊下を進み、途中で戻ってくる。
それを見た仲間たちが、どこまで進めたのかを聞いている。
「お前、前より進んだじゃないか!」
「だろ? 次は最後までいけそうだ!」
「頑張れよ!」
勇者候補は、その様子をしばらく眺めた。
そして看板をもう一度見る。
『この先に進む実力があるか、廊下に挑戦してみよう』
「……別に、やらなくても先には進めるんだよな?」
誰かに聞くこともなく、答えは出ていた。
先へ進むために必要なら挑戦する。
だが、必要ないならやる意味がない。
それに、勇者が罠にかかるわけがない。
自分から罠にかかりに行く必要もない。
「俺はいい」
そう言って、試練の廊下を素通りした。
そのまま42階層へ進む。
初めて見る階層。
初めて見る魔物。
それでも、これまでと同じように戦っていく。
43階層。
44階層。
45階層。
初見で進んでいるにもかかわらず、大きく足止めされることはなかった。
「まだいけるな」
46階層。
47階層。
48階層。
49階層。
そして――
「50階層か」
ついに50階層へ到達した。
37階層で多くの勇者候補が苦戦している中、彼は装備を変えながら突破した。
そして、その後の階層も誰かから攻略法を教えてもらうことなく、初見で進み続けた。
50階層まで来ても、まだ先へ進めそうだった。
この勇者候補は、この時点ではまだ知らなかった。
このダンジョンが、ただ階層ごとに敵が強くなるだけの場所ではないことを。




