勇者候補
アレンはマスタールームから、勇者見習いたちの装備を見ていた。
「悪くないな」
装備の質はかなり高い。
武器も防具も一流。
さすがに勇者を目指しているだけのことはある。
だが――
「悪くないんだけど……」
アレンは少し考える。
「Sランク冒険者と同じくらいか」
勇者見習いたちの装備は、Sランク冒険者が使っているものと比べても遜色がない。
しかし、現在の勇者が使っている装備とは明確な差があった。
二段階くらい違う。
「やっぱり勇者の装備って別格なんだな」
アレンは現在の勇者の姿を思い出す。
勇者は、すでに人間の強さという範囲から完全に外れていた。
ソロでケルベロスを撃破する。
それだけでも異常だが、実際に戦っている姿を見れば、その異常さがさらに分かる。
「人外って、ああいうのを言うんだろうな」
一方、目の前の勇者見習いたちからは、そこまでの存在感を感じない。
強い。
間違いなく強い。
だが、まだ人間の延長線上にいる。
「この差は大きいな」
アレンはそう思いながら、勇者見習いたちの攻略を見守っていた。
そんな勇者見習いたちの登場を、Sランクパーティーも歓迎していた。
「勇者見習いが増えたな」
「いいことじゃないか」
「そうだな」
理由は単純だった。
Sランクボスを倒せる可能性のある冒険者が増えたからだ。
「もし勇者見習いがSランクボスを倒したら、Sランク装備が市場に出てくるかもしれない」
「そうなれば、俺たちも装備を選べるようになるな」
今まではSランクボスのドロップ装備など、ほとんど市場に出てこなかった。
手に入れる機会そのものが少ない。
だからこそ、勇者見習いたちがSランクボスに挑戦することには大きな意味がある。
「頑張ってくれ」
「俺たちのためにもな」
Sランク冒険者たちは、いつの間にか勇者見習いたちを応援していた。
そして、その様子を見ていたのは冒険者だけではない。
ダンジョン前にできた町でも、勇者見習いたちの話題で持ちきりだった。
「今日は何階まで行ったらしい?」
「昨日はあの子が一番深くまで行ったみたいだぞ」
「本当にソロでそこまで行ったのか?」
町の人たちも、勇者見習いたちがどこまで進めるのか楽しみにしていた。
勇者はすでに引退を発表している。
次の勇者はまだ決まっていない。
だからこそ、今いる勇者見習いたちの中から次の勇者が現れるのではないか。
そんな期待もあった。
アレンは町の様子を見ながら思う。
「……なんか、ちょっとした大会みたいになってないか?」
勇者見習いたちは、そんな周囲の期待など気にする余裕もなく、今日も一人でダンジョンへ挑んでいく。
そしてアレンは、その先にあるSランクボスの姿を思い浮かべた。
「さて、誰か倒せるかな」
今のところ、アレンにはまだ分からない。
勇者見習いたちが、本当に現在の勇者に近づけるだけの力を持っているのか。
その答えは、これからの攻略で明らかになっていく。




