リリアの相談
リリアはセレスティアとフローラに相談していた。
「私もこちらに住みたいのですけれど、この区画を使わせていただくことはできないでしょうか?」
リリアが尋ねたのは、ダンジョン内に用意された貴族向けの居住区画だった。
ダンジョンの中で生活できる。
しかも安全で、生活に必要なものも揃っている。
一度ここで暮らしてしまえば、外へ戻るのが惜しくなるほど快適だ。
リリアもすっかり気に入っていた。
セレスティアは少し考えてから答える。
「私もフローラも、最初からここに住んでいたわけではありませんわ」
「そうなのですか?」
「ええ。私もフローラも、ダンジョンマスター様から『こちらに住みませんか』と打診が来たのです」
フローラも頷いた。
「私も突然だったので驚きました」
「では、お二人はダンジョンマスター様から認められたということですの?」
「おそらく、私たちが住むことに何かしらのメリットを感じられたのでしょうね」
セレスティアはそう答えた。
リリアは真剣な顔で二人を見る。
「では、私も価値を示せば……」
「ええ」
セレスティアは微笑んだ。
「あなたの価値を示せば、ダンジョンマスター様から打診が来るかもしれませんわ」
「本当ですの!?」
リリアの顔が明るくなる。
「ええ。ただ……」
セレスティアは少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ダンジョンマスター様にとって、何が価値になるのかまでは分かりませんの」
「……」
「ごめんなさいね。私も、あなたに何をすれば認めてもらえるのか、具体的には分かりませんわ」
「そうですの……」
リリアは少し考え込んだ。
ダンジョンマスターにとっての価値。
辺境伯令嬢であることか。
騎士団を率いていることか。
それとも、37階層まで到達したことか。
だが、それがダンジョンマスターにとってどれほどの価値になるのかは分からない。
「……それなら」
リリアは顔を上げた。
「私自身の価値を高めればいいのですわ」
「リリア?」
「いつかダンジョンマスター様に認められてみせますわ!」
リリアは勢いよく立ち上がった。
「まずは騎士団をもっと強くしますわ。30階層のボスを訓練に使って、辺境伯軍の力をさらに高めます」
「それは良いと思いますわ」
セレスティアが頷く。
「そして、ダンジョンマスター様に必要とされる人間になればいいのですわね!」
リリアは完全にやる気になっていた。
ただ――。
「……ところで」
フローラが首を傾げる。
「ダンジョンマスター様に、何をアピールすればいいのでしょう?」
「……」
リリアが固まった。
「それは……」
「分からないのですわね」
「ええ」
リリアは少しだけ困った顔をした。
具体的に何をすればいいのかは、まったく分からない。
それでも――。
「とにかく、やってみますわ!」
やる気だけは十分だった。




