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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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リベンジを誓う

リリアは37階層で引き返す結果になったことに、満足していなかった。


ダンジョンから戻ってきた今でも、頭の中には37階層の光景が残っている。


「……悔しいですわ」


思わず口から言葉が漏れる。


リリア自身、無謀な戦いをしたとは思っていない。


あのまま戦い続ければ、騎士たちに大きな被害が出る可能性があった。


だから撤退した。


それは指揮官として当然の判断だった。


それでも納得できない。


「装備さえ整っていたら、まだいけましたわ」


37階層まで来た騎士たちは、決して限界だったわけではない。


疲労はある。


だが、まだ戦える余裕は残っていた。


問題だったのは、リッチに対して有効な装備が不足していたことだ。


魔法剣や魔法への対策が施された防具があれば、戦い方も変わってくる。


「……ならば、買えばいいのですわ」


そう考えたリリアは、すぐに父親のところへ向かった。


「お父様、お願いがありますわ」


「なんだ?」


「魔法剣と魔法防具を購入していただきたいのです」


リリアは37階層での戦いについて説明した。


リッチの強さ。


騎士たちの状態。


そして、装備があればまだ戦えるという自分の考え。


「なるほどな」


辺境伯は話を聞き終えると、腕を組んだ。


リリアは期待を込めて父親を見る。


だが――。


「駄目だ」


「……なぜですの!?」


あまりにもあっさり断られた。


「高価な装備を買ってまで挑む必要はない」


「ですが、お父様!」


「それに、俺ならリッチに勝てる」


「……」


リリアは固まった。


「俺なら、今の装備でも勝てる」


父親は何でもないことのように言う。


「…………お父様が?」


「そうだ」


リリアは悔しそうに顔をしかめた。


自分たちが苦戦した相手に対して、父親は勝てると言っている。


もちろん、父親が強いことは知っている。


辺境を守り続けてきた人物なのだから、実力は本物だ。


だからこそ悔しい。


「私たちだって、もっと戦えましたわ」


「ならば、次は勝てるようにすればいい」


「……」


父親の言葉に、リリアは返事をしなかった。


辺境伯軍は国一番。


リリアにとって、それは誇りだった。


今回のダンジョン攻略でも、その強さを見せたかった。


30階層を突破し、さらに先へ進み、37階層のリッチまで倒す。


そこまでできれば、辺境伯軍の名を国中に知らしめることができる。


そう思っていた。


それなのに、37階層で引き返した。


「……辺境伯軍が国一番だというところを、見せたかったのですわ」


リリアは小さく呟いた。


悔しさは消えない。


だが、しばらく考えているうちに、別のことが頭に浮かんできた。


「そういえば……」


リリアが顔を上げる。


「30階層のボスですわ」


37階層のことばかり考えていたが、30階層のボスもかなり強かった。


油断すれば前衛が崩される。


前衛が崩れれば、後衛まで危険になる。


だからこそ、騎士たちは常に周囲を確認しながら戦っていた。


一人が突出すれば仲間が支え、誰かが危なくなれば別の者が入って穴を埋める。


戦いそのものが、騎士団の連携を鍛える訓練になっていた。


しかも、倒せばダンジョンから装備を手に入れられる。


「……これ、訓練に丁度いいのではありませんの?」


リリアの表情が変わる。


「普通の訓練場では、あれほど強い相手と実戦形式で戦うことはできませんわ」


もちろん命の危険はある。


だが、ダンジョンなら撤退できる。


戦う相手の強さも分かっている。


そして、騎士たちがどこまで戦えるのかを実際に確認できる。


「交代で騎士たちを連れて行きましょう」


リリアは次々と考えを膨らませていく。


一度に全員を連れて行く必要はない。


部隊を分けて30階層まで送り込み、ボスとの戦闘を経験させる。


戦闘後には問題点を確認し、次の部隊に反映する。


それを繰り返せば、騎士団全体の連携が鍛えられる。


「これは使えますわ」


先ほどまで悔しそうにしていたリリアの顔に、少しずつ笑みが戻っていく。


「30階層のボスを、騎士団の訓練メニューにしましょう」


父親も少し驚いたようにリリアを見る。


「ずいぶん気に入ったようだな」


「ええ。あの強さなら、訓練相手として申し分ありませんわ」


リリアは胸を張った。


37階層で負けた。


その事実は変わらない。


だが、そこで終わる必要はない。


30階層で何度も戦い、騎士たちを鍛える。


実戦を重ねて、連携を磨く。


手に入れた装備も活用する。


そして、いつか――。


「騎士団が十分に強くなったら……」


リリアは37階層の扉を思い浮かべる。


その先にいるリッチ。


今度は撤退しない。


「いつか、リッチにリベンジしますわ」


悔しさは、もう消えていなかった。


だが今度の悔しさは、前に進むためのものだった。

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